社説

社説[基地ドローン禁止]恣意的な運用を許すな

2020年8月9日 09:17

 政府は、小型無人機ドローンの飛行を原則禁止する施設として在日米軍15基地を指定した。県内では、嘉手納基地、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセン、キャンプ瑞慶覧、普天間飛行場の5施設が対象となる。

 これら施設と周囲300メートルの上空は9月6日以降、改正ドローン規制法の規定で、米軍の同意がない限り、いかなる目的でもドローンを飛ばすことができなくなる。今回指定されたのは米軍との調整がついた施設であり、今後追加指定される可能性もある。

 沖縄には在日米軍専用施設の7割が集中し、基地の周囲は民間地だ。普天間や瑞慶覧のように、市街地のただ中に広がる基地、海岸や海上を使用する施設も少なくない。

 ドローンは報道や観光、スポーツイベントの撮影以外にも宅配、農業、災害対応など広く活用されているが、今後は県内の広い地域で利用が難しくなる。米軍による国民の権利侵害であり、狭い島に民間地と基地が混在する沖縄の実情を全く顧みない規制だ。

 確かに米軍に申請し基地管理者の同意を得れば飛行はできる。ただ、同意・不同意の基準は示されておらず、米軍の恣意(しい)的な運用を排除する制度的な保証はない。

 ドローン禁止にテロ対策という面があるにしても、テロと関係のない活動まで制約されるなら、規制緩和による経済再生という政府自身の方針とも合致しない。政府は、米軍施設周辺でドローンが使用できないのはどんな場合か列挙した基準を速やかに作成し明示すべきだ。

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 基準の明示にあたって、報道の自由を尊重するのは当然だ。報道の自由は、最高裁が判示したように「国民の『知る権利』に奉仕するもの」で、2019年5月に改正ドローン規制法が成立した際、衆参両院の委員会も付帯決議で配慮を求めた。

 ドローン飛行が今後原則禁止されることになるキャンプ・シュワブ沖の新基地建設現場水域では、これまで報道機関や市民団体がドローンを活用し、工事の進展や赤土流出といった事故の状況をチェックすることができた。

 だが、今後は米軍が同意しない限り飛行させることはできなくなる。キャンプ・シュワブやハンセンは演習場でもあり、実際にヘリの事故や火災なども起きているが、米軍の同意に委ねていては被害の様子を県民が知ることは難しくなるだろう。報道目的の飛行は、あらかじめ禁止対象から除かれる必要がある。

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 先月以降、県内の米軍基地内で新型コロナウイルス感染が拡大した際、米軍は当初施設ごとの感染者数すらプライバシーを理由に公表しようとしなかった。日本新聞協会は19年6月、ドローン規制を機に米軍が過度な取材制限を行うことに懸念を示したが、その兆候は既に出ていると言わざるを得ない。

 飛行禁止の米軍基地を指定するまで1年以上かかっており緊急性があるかも疑問だ。時間をかけてドローン規制のあり方を見直し、国民の権利を最大限守る制度に改めるべきだ。

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