安倍政権の女性施策のキャッチフレーズは「2030(にいまる・さんまる)」だ。2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする目標である。 

 年内にも策定される政府の新たな男女共同参画基本計画の素案から、その目標が消えた。代わりに「20年代の可能な限り早期に30%程度となるよう目指す」と大きく後退した文言が盛り込まれた。

 政権の看板政策だったはずなのに、掛け声倒れに終わったということか。本気で取り組んできたのか。政府の責任を問いたい。

 13年1月、安倍晋三首相は第2次政権発足直後の所信表明演説で「働く女性が自らのキャリアを築き、男女が共に仕事と子育てを容易に両立できる社会」を目指すと強調した。

 あれから7年半がたつ。

 女性の登用目標などの策定を義務付けた「女性活躍推進法」はできたが、企業の女性管理職の割合は12%に届いていない。「政治分野の男女共同参画推進法」も成立したが、国会議員の女性割合は衆院で9・9%と世界全体の24・9%から大きく見劣りしている。第2次安倍政権で一時5人いた女性閣僚も、今は3人だ。

 基本計画の素案では、30%の政府目標が「社会全体で十分共有されなかった」と分析している。

 昨夏の参院選で同僚女性候補の応援に立った自民党衆院議員が「(候補者の)一番大きな功績は子どもをつくったこと」と話す場面があった。

 女性登用の重要性そのものが党内で共有されていないということだろう。

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 「2030」をはじめとする政府の女性活躍策に、違和感を持つ女性は少なくない。

 活躍することに異論はないものの、少子化で先細る労働力を補ってもらおうという意図が透けて見えるからだ。

 非正規労働者の約7割を女性が占める。一方で女性の賃金は男性の約7割にとどまっている。「待機児童ゼロ」の目標はいまだ達成されず、妻が家事・育児の大部分を担っている現状も変わらない。

 女性が活躍するための環境整備もなしに、低賃金で大活躍を迫られているというのが、違和感の原因だ。

 特に今、新型コロナウイルスによる雇用情勢の悪化で、母子家庭や非正規で働く女性たちの不安定な就労が顕在化している。

 能力発揮の環境を整えることができなかった責任も重く受け止めなければならない。■    ■

 素案では女性活躍推進に向けて、一定の人数を女性に割り当てるクオータ制などポジティブ・アクション(積極的改善措置)の導入についても触れている。

 日本の場合、女性の政界進出がなかなか進まないばかりか、増加のスピードでも後れをとっている。登用が進む上場企業の女性役員も、社外起用が多いなど男性とは大きく異なっている。

 女性リーダーを増やし世界標準に近づくためには、クオータ制にも踏み込んだ実効性のある制度議論を進めるべきだ。