社説

社説[PFOS米文書]基地起因は間違いない

2020年8月13日 07:05

 米軍嘉手納基地内外を流れる大工廻(だくじゃく)川や、その周辺の井戸で検出されている有機フッ素化合物PFOS(ピーホス)の汚染源が、同基地内で1970~80年代に使用されていた消火訓練場である可能性が高まった。

 沖縄タイムスが入手した米下院軍事委員会の報告書(85年作成)によると、消火訓練場には汚染防止装置はなかったと明記されている。泡消火剤が地中に染み込み、基地外へ流れ出たのは間違いない。約半世紀にわたり、基地周辺住民が環境汚染にさらされてきた実態が浮かび上がる。

 米空軍は70~80年代にかけて、PFOSが含まれた泡消火剤による訓練を恒常的に行っていた。米環境専門家が米国の複数の消火訓練場跡を調査したところ、PFOS汚染は地中の深さ数十メートル、幅数キロの範囲に及んでいた。

 沖縄でも、嘉手納基地や普天間飛行場の周辺でたびたび、高濃度のPFOS汚染が発覚してきた。環境省が6月に公表した調査結果では、大工廻川は1リットル当たり1462ナノグラムを検出。国の指針値50ナノグラムを大幅に上回り、全国で最も高い数値だった。県企業局による調査では、近接する井戸でも深刻な汚染が判明している。

 汚染源を巡り、専門家らは米軍由来ではないかと再三指摘してきたが、米側が関与を認めたことはなかった。しかし、米情報公開法に基づく文書請求で明らかになった今回の事実によって、汚染源がほぼ特定されたと言っていい。日本側による速やかな立ち入り調査が必要不可欠だ。

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 そもそも、米軍基地内にどういう施設があり、何が貯蔵・使用されているか、県民に知らされることはほとんどない。有害物質が民間地に漏れ出て初めて、汚染の一端を知らされる。有機フッ素化合物は分解されにくく、体内に長く残留する。汚染源特定は決して過去の話ではなく、現在そして未来に影響を及ぼす問題だと捉えるべきだ。

 日米地位協定の規定で、米軍は排他的管理権を握っている。基地外への環境汚染が発覚し、県や地元自治体が立ち入り調査を求めても、米側の許可なしに実現しない。今年4月に普天間飛行場から14万リットル超の泡消火剤が流れ出した際、立ち入りが認められたのは11日後だった。

 さらに、地位協定は米側に土地の原状回復義務を免除している。そのことが、環境汚染を自発的に公表せず、問題を放置する構図を温存させてきたのではなかろうか。

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 環境調査に関する条項がない地位協定を補うため、2014年に日米両政府が結んだ環境補足協定は、環境に影響を及ぼす事故が起きた場合に立ち入りを規定している。だが、その後に起きた事象をみれば、県民は補足協定の恩恵を感じることができない。

 PFOS汚染源の特定を受けて、まずなされるべきは、基地内の使用履歴と汚染実態の徹底的な調査であり、それを踏まえた汚染物質の除去・浄化だ。使用者責任を米軍に認めさせることが日本政府の役割であり、主権国家として求められる姿勢であろう。

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