社説

社説[感染米兵移送計画]犠牲強いる構図浮かぶ

2020年8月21日 07:40

 狭い島空間に集中する米軍基地は、平時有事を問わず、そこに住む人々に大きな負担と犠牲を強いる。時に、思いもよらない問題を引き起こすこともある。新型コロナウイルスの感染拡大がそうだ。

 爆発的感染が問題となった米原子力空母セオドア・ルーズベルトで、当初、陽性者を含む3千人以上の乗組員を、県内の米軍基地に移送する計画があったことが明らかになった。

 米海軍の報告書によると、西太平洋を航行していたルーズベルトから初の感染者が出たのは3月24日。隔離場所の検討を始めた第7艦隊司令部(神奈川県横須賀市)は、県内の普天間飛行場や海兵隊基地に計3千室確保できると試算した。

 4月1日、米領グアムの知事が受け入れを表明したことから結果としてグアムで下船したが、直前まで空母から沖縄に空路で運ぶ計画を最優先で検討していたという。

 第7艦隊司令部の上部組織である太平洋艦隊司令部が、沖縄までの移動時間や日本政府との関係複雑化を懸念し撤回したとされる。

 ルーズベルトの感染者は、最終的に乗組員の約4分の1にあたる1248人に膨らんだ。

 米軍にとっては合理的な判断の一つだったのだろう。だがもし実行されていれば、県民の不安と不満が爆発したかもしれない。

 基地が集中しているということは、このような事態を引き起こしかねない危うさを抱えていることでもある。 

■    ■

 報告書は、日米政府間での事前協議や調整には触れていない。外務省関係者は「計画段階であり、打診はなかった」と答えている。

 しかしだからといって、「はいそうですか」で済まされる問題ではない。

 仮にグアムが受け入れなければ日米地位協定が規定する「排他的使用権」によって、米軍は県民の頭越しに乗組員を移送したのではないか。

 もとから日本政府は米軍に注文を付け、訓練などに制約を課すことに消極的だ。県の担当者も「県への報告義務はなく、搬送されても把握できなかったかもしれない」と話している。

 感染症対策で重要なのは、情報の積極的開示と、米軍、政府、県の連携体制の構築である。 

 今回は撤回されたが、県民が声を上げ、経緯をただし、日米双方に現状の改善を求めていくことが必要だ。

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 20日時点で在沖米軍関係者の感染は355人に上る。

 PCR検査の義務付け決定は最近のことで、地位協定により日本の検疫を免除されている米軍人が、水際対策の抜け道になっているとの指摘は以前からあった。基地のロックダウンも徹底されず、情報開示も十分とはいえない。

 日米両政府は2013年の合同委員会で感染症の発生に際し協力して対応することを確認している。

 沖縄は今も「感染まん延期」にある。これを機に連携体制を点検し、あり得るかもしれない次の流行に備えるべきだ。


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