[東京報道プラス][アクロス沖縄](135)  井黒卓さん(33)=名護市出身

「全日本最優秀ソムリエコンクール」で優勝した井黒卓さん=13日、東京銀座の「ロオジエ」

 日本一のソムリエを決める3年に1度の「全日本最優秀ソムリエコンクール」が今月初旬、都内で開かれ、県出身者として初めて優勝した。都内の高級店を渡り歩きながらソムリエの技術を磨き、現在は銀座にあるミシュラン三つ星のフレンチレストラン「ロオジエ」に勤務。日本ソムリエ協会の理事として、プロを対象としたさまざまな教育と指導にも当たるなど、若きソムリエのリーダー的存在として活躍している。

 井黒さんは米国で生まれ、小学6年生の時に母親の実家がある名護市羽地に移り住んだ。多感な時期をやんばるの自然の中で過ごし、高校卒業後は、東京で働いてみたいという軽い気持ちで上京。将来を模索する中で、バーやレストランなどで働いていた。

 転機は、レストランのマネージャーがソムリエだったことから「自分も資格を取れば給料も上がるかも」と、分厚いソムリエ教本をめくった時だった。

 ワインの歴史や品種、産地の気候や土壌など幅広い専門知識。「原産地呼称制度」という欧州のワイン法なども頭にたたき込んだ。さらに、ワインを勉強するならフランス料理店で働きたいと、見習いとして表参道にある有名店「ロアラブッシュ」、ソムリエ試験の合格後は日本を代表する店「カンテサンス」などで経験を積んだ。

 ソムリエは料理や客の好みを考慮し、最適なワインを提案する。また、仕入れや在庫の品質管理、飲料のセールスによって会社に貢献する。「僕たちは知識と感覚でワインのことを知っていても、造ってはいない。生産者のストーリーをお客さまに届ける橋渡し的な存在だ」と話す。

 「ロオジエ」に移ったのは今から5年前。同店のシェフソムリエで現代の名工にも選ばれている中本聡文さんの下で学びたいと、本人に直談判した。

 「一流の店で、技術だけでなく心遣いやお客さまに向き合う姿勢を磨く。その集大成としてコンクールで結果を出す」。全日本の優勝は3度目の挑戦で勝ち取った。その原動力は前回2位の悔しさだった。世界的に知られる日本ソムリエ協会の田崎真也会長から「2位じゃダメなんです」というメッセージを受け取り、優勝への思いを強くした。

 今大会には全国120人が出場した。テイスティング、筆記、サービス、上司へのプレゼン、客へのクレーム対応など試験内容は多岐にわたる。「コンクールを完璧にこなせば、仕事も完璧にこなせると信じている。職場で学び取ったことが結果になった。もっと知識と経験を深めたい」。東京で見つけた目標は一つ達成した。次は来年に豪州で開かれるアジア・オセアニア大会、そして世界が待っている。(東京報道部・吉川毅)

 いぐろ・たく 1987年、米国ロサンゼルス生まれ。小6の時、名護市に移住。羽地中、那覇国際高卒。全日本最優秀ソムリエコンクール優勝など、さまざまなコンクールで入賞多数。日本ソムリエ協会理事。「ワインは感動を与えてくれる飲み物。味覚だけでなく、官能的に呼び掛けてくれる」と話す。酒はジャンルを問わず好きだが、特に好きなのはカクテル。苦手な食べ物はキュウリ。

(写図説明)「全日本最優秀ソムリエコンクール」で優勝した井黒卓さん=13日、東京銀座の「ロオジエ」