社説

社説[河井夫妻初公判]買収の原資含め解明を

2020年8月27日 09:06

 前法務大臣が関与し、計100人に現金が渡ったとされる前代未聞の買収事件の審理が始まった。昨年7月の参院選広島選挙区を巡り、公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われた前法相で衆院議員の河井克行被告と、妻で参院議員の案里被告=いずれも自民党を離党=の初公判が25日、東京地裁であり、共に起訴内容を否認し、無罪を主張した。

 夫妻は、地元議員らへの約2900万円の現金提供の事実はおおむね認めたが、票のとりまとめなど買収の意図はなかったと主張。

 対する検察側は冒頭陳述で、現金を受け取ったとされる地元議員や首長、後援会幹部ら計100人の名前を1人ずつ明かし、夫妻との関係や現金授受の日時などを説明した。一方で、大半が現金受領を認めた100人全員の刑事処分は見送られた。

 弁護側は、検察が有罪立証に有利な供述を得るのと引き換えに、被買収側の立件を見送る違法な「裏取引」があったと批判し、公判打ち切りを求めた。

 現金の授受自体に争いがなく、地元議員ら100人に渡ったとされる現金の趣旨が最大の争点。今後、最大120人の証人尋問が行われる予定の裁判は、来年に判決が出る見通しだ。

 法秩序を維持する法務省のトップも務めた国会議員が選挙買収の罪に問われた事件の動機は何だったのか。原資となったカネは一体どこからもたらされたのか。公判を通して真相を明らかにすべきだ。

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 配られた現金について、検察側は、案里議員を当選させるため「克行前法相がなりふり構わず供与した」と指摘した。弁護側は、克行前法相が自身の地盤固めのため、参院選前にあった統一地方選の陣中見舞いや当選祝いの趣旨だったと否定。「広く慣習とされ、法的にも許容される政治活動」と反論したが、無理のある説明だ。

 仮に「政治活動」だとして、選挙を控えた時期に約2900万円を地元議員や首長らに配ることが「慣習」なのか。「政治とカネ」を巡る構図は古くて新しい問題だが、またもやその内実の一断面を見せつけられた。

 自民党から参院選前、夫妻側に通常の10倍とされる1億5千万円が支給されていた。それが今回の買収の原資ではないか、との疑念がある。検察側は初公判で、原資について触れなかったが、今後の公判で明らかにすべきだ。

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 検察の手法に疑問符がつく点がある。大半が現金受け取りを認めた地元議員ら100人全員の立件が見送られたことだ。

 過去には10万円でも被買収の罪で起訴されたのに、今回は100万円以上の受領も含め一切おとがめなし。起訴するかどうかは検察に幅広い裁量があるとはいえ、被買収側を全て不問に付すのは、処罰の公平性を損なう。

 被買収は買収と同様、民主主義の根幹を成す選挙を害する犯罪に他ならない。速やかに処分を決めるか、そうでなければ、その理由を丁寧に国民に説明する必要がある。

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