社説

社説[石垣住民投票訴訟]門前払い納得できない

2020年8月28日 06:50

 石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票の実施義務付けを、市民らが市に求めた訴訟の判決で、那覇地裁は実施するかどうかは「行政処分に当たらない」として、原告の訴えを却下した。

 住民投票の実施義務の有無を問わず、訴えの内容が訴訟の対象ではないとして判断を避ける門前払いである。

 原告・弁護団は「人権救済の最後の砦(とりで)としての役割を放棄するもので、あり得ない判決」と声明を出した。結果的に市自治基本条例を軽視する市の姿勢を容認する判決で、納得できるものではない。

 住民投票を巡っては、2018年に「市住民投票を求める会」が有権者の約4割に当たる1万4千筆の署名を集めて住民投票条例の制定を請求した。だが、市議会が否決した経緯がある。

 市自治基本条例には住民投票の請求が明記されている。

 原告は条例を根拠に、市議会で否決されても市長は有権者の4分の1以上の署名があれば住民投票を実施する義務があると訴えた。

 これに対し、市側は自治基本条例ではなく地方自治法に基づく請求で市議会が否決した時点で、手続きは終了したと主張してきた。

 判決は「(条例に)規則が制定されていない段階で実現しようとするには無理がある」との内容だ。救済については「住民投票の実施の義務付け以外の方法で図られるべきもの」と指摘した。

 訴えの却下は約1万4千人もの民意を切り捨てるようなものだ。

■    ■

 今回の訴訟は、住民投票条例案が2度市議会で否決されたことを受け、昨年9月に市民らが提起したものだ。

 だが、同年12月には、市自治基本条例の廃止案を与党系議員らが市議会に提案する動きもあった。

 条例は「主権者の市民が地域のことを考え、市民自治によるまちづくりを行う」とうたい、市民の権利や責務、住民投票制度などを規定しているにもかかわらずだ。

 最終的に、廃止案は否決されたが、市民らが条例を基に住民投票の実施を求める訴訟を起こしたことで「投票つぶし」との見方もあった。

 石垣市の中山義隆市長は陸自配備を「国防や安全保障は国の専権事項」と容認する。

 市民の安全や生命を守る責務がある自治体の長として、生活に影響を及ぼしかねない配備について住民の声を吸い上げ、判断するのがその役割ではないか。

■    ■

 原告・弁護団は判決後の会見で「政治的意思を表明する権利の実現のため、引き続き全力で取り組む」と決意を述べた。石垣市からオンラインで参加した若者たちは「訴えそのものが認められなかった訳ではない。諦めないで考えていく」と語った。

 司法は門戸を閉ざしたが、有権者の約4割もの民意を市や市議会は無視することはできないはずだ。

 「自分たちのことは自分たちで決めたい」という市民らの訴えに、正面から向き合い、救済のための別の道を探る必要がある。

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