学びはだれのもの

落ち着きなくトラブル多い「手のかかる子」 背景に虐待や貧困も 難しい“発達障がい”の判断 

2020年8月30日 08:40

[学びはだれのもの]特別支援教育(1)

県内の教員向けに講演する韓昌完教授。「教師の主観で発達障がいというレッテルを貼るのは危うい」と戒める=7月、本島中部

 数年前、本島中部の中学校に通う男子生徒への支援について、教員や外部の関係者が検討会議を開いた。特別支援教育が専門で、当時琉球大学にいた韓昌完(ハン・チャンワン)下関市立大学教授(副学長)は、「手のかかる子」とされた生徒の背景が気になった。

 生徒は落ち着きがなく、同級生とけんかするなどトラブルが多い。授業中は眠そうで勉強に遅れもあり、小学校では特別支援学級に在籍。中学校は通常学級だったが、発達障がいの検査を勧められていた。

 「本当に障がいのせいだろうか」。韓教授らが生徒の家庭環境を詳しく見ると、さまざまな要因が潜んでいることが分かった。

 父親は別居中で、一緒に暮らす母親には十分に食事を作ってもらえない。夜の仕事の母親の帰りを待とうと、睡眠は不規則で短かった。部屋は荒れたままになり、不衛生からくる鼻炎も患っていた。

 さらに父親によるドメスティック・バイオレンス(DV)があり、両親は離婚調停中。生徒は、暴力を振るう父親に引き取られることを心配していた。

 「自分の人生がどうなるかも分からない状況で、勉強に集中できますか。いらいらしているのも、眠そうでぼんやりしているのも、そんな環境や慢性的な体調不良が強く影響している」

 そう考えた韓教授らは、学校や医療機関と連携して生活支援に力を入れた。定期的な面談で不安や悩みに寄り添い、睡眠不足のときには昼休みに保健室で寝かせるよう学校に助言した。

 ちょうど数カ月後には母親が親権を持つことも決まり、生活面や情緒面で安定した生徒は、問題とされていた行動が劇的に減少した。

 虐待や育児放棄、貧困、いじめ-。「そうした家庭や学校の環境によって一時的に心身の不調や学業不振に陥っている子が、発達障がいとみなされていると考えられるケースが沖縄では相当数ある」と韓教授は警鐘を鳴らす。そしてこう続けた。

 「通常の学級で対応しづらい子が、十分な検討もなく支援学級に入っているように見える。それは『特性に応じた教育』や『多様な学び場』という美名に隠れた、子どもの学習権の侵害です」(編集委員・鈴木実)

◇    ◇

 沖縄の教育の「今」を連載します。最初のテーマは特別支援教育。対象児童生徒の急増や、障がいのある子とない子が共に学ぶインクルーシブ教育への模索など、関係者が直面している現状や課題を取り上げます。

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