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辺野古違法確認訴訟 判決(要旨)

2016年9月17日 12:01

3 「本件承認処分の第1号要件欠如の有無」について

 (1) 第1号要件は、埋め立て自体および埋め立て地の用途が国土利用上の観点から、適正かつ合理的なものであることを要するとする趣旨と解される。

 承認権者がこれに該当するか否かを判断するに当たっては、国土利用上の観点からの当該埋め立ての必要性および公共性の高さと、当該埋め立て自体および埋め立て後の土地利用が、周囲の自然環境ないし生活環境に及ぼす影響などと比較衡量した上で、地域の実情などを踏まえ、総合的に判断することになる。

 これらさまざまな一般公益の取捨選択あるいは軽重の判断は高度の政策的判断に属するとともに、専門技術的な判断も含まれる。承認権者である都道府県知事には広範な裁量が認められると解される。

 本件承認処分の第1号要件の審査が違法となるのは、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により、重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、または、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によって、その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱しまたはこれを乱用したとして違法となる。

 (2) ア 沖縄の地理的優位性について

 沖縄と潜在的紛争地域とされる朝鮮半島や台湾海峡との距離は、ソウルまでが約1260キロメートル、船舶での移動時間が約34時間、オスプレイの固定翼モードの速度時速230マイル(368キロメートル)で約3・5時間となる。台北までが約630キロメートル、船舶での移動時間が約17時間、オスプレイで約2時間となる。

 他方、北朝鮮が保有する弾道ミサイルのうち、ノドンの射程外となるのはわが国では沖縄などごく一部であり、南西諸島は、わが国の海上輸送交通路に沿う位置にあって、沖縄本島はその中央にある。

 これに対し、グアムからは、ソウルまでが約3220キロメートル、台北までが約2760キロメートル、沖縄までおよそ2200キロメートルであること等に照らして、沖縄に地理的優位性が認められるとの国の説明は不合理ではない。

 イ 海兵隊の一体的運用について

 知事は、普天間飛行場に配備された航空機部隊は、強襲揚陸艦に搭載され、艦船からの輸送および強襲揚陸に対する支援を行うことを任務とし、揚陸艦の母港は長崎県佐世保基地なので、沖縄から海兵隊が展開するには佐世保基地から回航した揚陸艦が沖縄に到着するのを待たなければならないとして、「沖縄から海兵隊航空基地を移設しても海兵隊の機動力・即応力が失われることはない」旨指摘する。

 在沖縄米軍の中でも、海兵隊は武力紛争から自然災害まで種々の緊急事態に迅速に対応する初動対応部隊として、他の軍種が果たせない重要な役割を持っている。強襲揚陸作戦ばかりでなく、海上阻止行動、対テロ作戦や安定化作戦、平時における人道支援·災害救助、敵地における偵察・監視、人質の奪還等の特殊作戦や危機発生時の民間人救出活動も任務としている。

 これらの場合には、在沖縄海兵隊独自の活動として、強襲揚陸艦とは別に行うことも想定していることから、知事の上記指摘はその前提において、海兵隊の持つ一部の任務に該当しうるにすぎない。その余の重要な任務については、海兵隊航空基地を沖縄本島から移設すれば、海兵隊の機動力・即応力が失われることになるから採用できない。

 ウ 普天間飛行場の返還と本件新施設等との関係について

 本件新施設等は、普天間飛行場の半分以下の面積で、その設置予定地はキャンプ・シュワブの米軍使用区域内なので、全体としては沖縄の負担は軽減される。

 また、1996年に日米間でされた普天間飛行場の返還合意は、沖縄県内の米軍施設および区域内に新たにヘリポートを建設することが前提とされている。これが満たされなければ、返還合意自体が履行されない関係にある。かつ、普天間飛行場が返還されるまでは、本件新施設等が米軍基地として使用されるわけではない。

 前者と後者は、二者択一の関係にあること、その間に上記合意に基づく本件新施設等による一部機能の代替以外の方法で普天間飛行場が返還される可能性、すなわち、前記のとおり、一体的運用が必要とされる以上、海兵隊全体が沖縄に駐留する必要性が失われるか、本島近辺に他の代替地を確保する必要性があるが、その可能性があるとは考えにくい。本件新施設等が設置されなければ、普天間飛行場が返還されない蓋然(がいぜん)性が有意に認められる。

 そうなると、計画されている普天間飛行場跡地利用による沖縄県全体の振興や多大な経済的効果も得られない。

 他方、仮に将来、海兵隊全体が沖縄に駐留する必要がなくなるとすれば、そのときは、本件新施設等もキャンプ・シュワブも必要がなくなり、返還されることになるはずだ。

 エ 普天間飛行場による騒音被害や危険性の原因と対策について

 知事は、普天間飛行場による騒音被害や危険性は、1996年および2012年に日米安全保障協議委員会で合意された航空機騒音規制措置という日米両国間の地位協定に関わる合意事項が遵守されていないことにより深刻化しているので、これを遵守させることで、それ(騒音被害や危険性)を防止できると主張する。

 しかし、同規制措置は、全て「できる限り」とか「運用上必要な場合を除き」などの限定が付されている。そもそも、これが遵守されていないとの確認は困難だから、知事の主張はその前提を欠いている。

 しかも、規制措置の内容を見ても、それによって普天間飛行場による騒音被害や危険性が軽減できる程度は小さい。これらは、周囲を住宅密集地に囲まれた普天間飛行場に海兵隊の航空部隊が駐留すること自体によって発生していることが明らかなので、普天間飛行場から海兵隊の航空部隊が他に移転すること以外に除去する方法はない。

 オ 以上要するに、(1)普天間飛行場の騒音被害や危険性、これによる地域振興の阻害は深刻な状況であり、普天間飛行場の閉鎖という方法で改善される必要がある。

 しかし、(2)海兵隊の航空部隊を地上部隊から切り離して県外に移転することはできないと認められる。

 (3)在沖縄全海兵隊を県外に移転することができないという国の判断は、戦後70年の経過や現在の世界、地域情勢から合理性があり尊重すべきである。

 (4)そうすると、県内に普天間飛行場の代替施設が必要である。

 その候補として本件新施設等が挙げられるが、他に県内の移転先は見当たらない。

 よって、(56)普天間飛行場の被害を除去するには本件新施設等を建設する以外にはない。言い換えると本件新施設等の建設をやめるには普天間飛行場による被害を継続するしかない。

 (3) 結論

 以上によれば、本件埋立事業の必要性(普天間飛行場の危険性の除去)が極めて高く、それに伴う環境悪化等の不利益を考慮したとしても、第1号要件該当性を肯定できるとする判断が不合理と認めることはできない。

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