社説

社説[辺野古新基地問題]工事強行し寄り添わず[安倍政権の7年8カ月]

2020年9月3日 06:50

 「沖縄に寄り添う」「できることは全て行う」

 安倍晋三首相のその言葉とは裏腹に歴代最長となった政権で、県民は基地負担の軽減をほとんど実感できなかった。米軍基地問題で、最大の課題である普天間飛行場の返還では、辺野古新基地建設を「唯一の解決策」として、強硬に押し進めた。

 安倍首相は辞任表明後の先月末、トランプ米大統領と電話会談した際にも「後任も移設を推進する」と伝えた。まるで、沖縄の民意をけん制するかのようだ。

 安倍政権のなりふり構わぬ辺野古強行の姿勢は、第1次政権時から続く。2007年には、辺野古沖でのサンゴ調査に自衛隊艦船を派遣。国家行政組織法の「官庁間協力」と説明するだけで明確な法的根拠を示さなかった。 

 県の埋め立て承認の取り消しや撤回で、沖縄防衛局が国民の権利利益の救済を目的とする行政不服審査制度を使い、身内である国土交通相に執行停止を求めたことは、全国の行政法学者が「制度の乱用」と批判。「結論ありきの出来レース」と指摘された。岩礁破砕許可を巡っても「県の許可は不要」と、従来の水産庁見解を一変させた。

 辺野古埋め立て承認を前に、仲井真弘多元知事に、普天間の5年以内の運用停止を約束した。だが、安倍首相や政府による米側への具体的な働き掛けはみえなかった。

 県民の期待は、ことごとく裏切られた。

■    ■

 普天間の一日も早い危険性除去が最大の目的だったはずだ。

 それが、沖縄の負担軽減を強調しながら移設が条件とされ、新基地は普天間にはない弾薬搭載場や強襲揚陸艦も接岸できる護岸が造られるなど機能は格段に強化される。

 大浦湾では、軟弱地盤が見つかり、完成までに、さらに少なくとも十数年かかることが明らかになっている。

 普天間移設計画はすでに破綻している。

 安倍政権の支持率は、全国と比べ沖縄では極端に低かった。17年の本紙などの県民意識調査では、安倍内閣が基地負担の軽減について、沖縄の意見を「十分に聞いている」3%、「ある程度聞いている」24%に対し、「聞いていない」が70%にのぼった。

 世界一危険な飛行場をあと十数年そのまま放置するつもりなのか、そのことについて、安倍首相は答えずに辞める。

■    ■

 翁長雄志前知事が、安倍首相との会談で、「『日本を取り戻す』という中に沖縄は入っているんですか」と問うたことがある。

 「辺野古が唯一」と政府が繰り返すのは、思考停止の固定観念とし、菅義偉官房長官には「政治の堕落ではないか」とも迫った。

 ほかに選択肢がない、という政策や軍隊の運用はあり得ない。

 県民投票をはじめ知事選や国政選挙などで反対の民意は何度も示されてきた。

 沖縄に寄り添うというのは新基地建設を断念し、普天間返還の道を探ることだ。

もっと詳しく。有料会員ならこんな記事も読めます。

沖縄の米軍基地の集団感染 発端は米本土部隊から

報告書から異例の「辺野古」削除 海兵隊の沖縄への強いこだわり

「翁長が恋しいです」流れ呼んだ妻の訴え 沖縄県知事選

月額550円で有料記事が月100本読み放題の「ライトプラン」もございます。 

 
連載・コラム
きょうのお天気