社説

社説[自民党総裁選告示]政策論争を優先させよ

2020年9月8日 08:03

 自民党の総裁選がきょう8日告示される。菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長の3氏が争う構図になるとみられる。

 事実上、安倍晋三総裁(首相)の後継者となる次の首相を決める選挙である。できるだけ開かれた方法で選ぶべきだ。だが、全国一斉の党員・党友投票は、政治空白を生むとして見送られた。中堅・若手議員や地方からの実施を求める声は聞き入れられなかった。

 一方で主要派閥は水面下で動き、菅氏の正式な立候補表明もない段階で、われ先にと菅氏支持へ雪崩を打った。既に菅氏は、岸田氏や石破氏を抑えて優位に立つとされている。今後の政局を見据え、早くも派閥間の主導権争いが激しさを増しているという。かつての派閥政治の様相だ。

 菅氏は立候補表明の会見で「安倍政権の取り組みをしっかり継承し、さらに前へ進める」と強調した。

 麻生太郎副総理兼財務相や二階俊博幹事長と共に安倍政権を支えたのが菅氏である。継承するというのであれば、安倍政権が最後まで果たさなかった国民への説明責任も含めて引き継いでもらいたい。

 森友学園への国有地値引き売却や加計学園の獣医学部新設、「桜を見る会」といった疑惑はうやむやのままだ。森友を巡っては、自殺した元近畿財務局職員の妻が真相解明を求めた訴訟が進行している。「既に結論が出た」と再調査に否定的な姿勢は許されない。

 7年8カ月に及んだ長期政権の総括もなく、ひたすら継承へと突き進む動きは、安倍政権が残した「負の遺産」への反省が見られない。

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 岸田氏は「われわれが求めるのは『分断から協調』だ」と決意を示し、石破氏も「国民の納得と共感が得られる自民党でありたい」と訴えた。

 両氏がそれぞれ立候補に際し示した政治手法への考え方は、安倍政権への批判とも受け止めることができる。

 経済政策についても「アベノミクスを引き継ぐ」とする菅氏に対し、岸田氏は「成長の果実が中小企業や地方に分配されていない」、石破氏は「東京一極集中の状況を変革し、地方に雇用と所得を生む」と考え方に差異がある。

 新総裁が選出される14日の両院議員総会では、400票近くある国会議員の票で大勢が決まるとみられる。ただし各都道府県連も3票ずつの票があり、ほとんどの都道府県連が党員・党友による予備選を予定している。

 活発な政策論争を通し、それぞれの違いを明確に示してほしい。目指す国の将来像もぜひ語ってもらいたい。

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 沖縄にとっては、辺野古新基地問題をどうとらえているかに関心が集まる。

 3氏とも米軍普天間飛行場の危険性を除去するには辺野古が唯一の選択肢ととらえているようだが、沖縄の民意とは大きく乖離(かいり)している。

 新基地計画は軟弱地盤の改良工事などによって工期が12年も延び、事業費も9300億円も膨らむと試算されている。かかり過ぎる時間やコストには、自民党の中からも検証や見直しの提案が出ている。総裁選でも議論すべきだ。

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