尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件から10年。周辺海域をなりわいとする八重山や宮古島の漁業者からは、領土を巡る国家間の対立を憂慮し、安全操業を願う声が上がった。

尖閣諸島

 「何も変わっていない」。八重山近海で40年超にわたり漁を営んできた男性(64)は嘆息する。事件以降、中国公船の侵入は常態化し、解決の糸口さえ見えない。一方で領土を巡る危機感と領有意識が政治や国民の間に広く浸透し、勇ましい掛け声が公然と飛び交う。「あおり立てる声が一番怖い。何か起きたとき、真っ先に影響を受けるのが八重山のウミンチュ(漁師)。外交を通して冷静に解決してほしい」と求めた。

 「事件以降、尖閣沖は海保巡視船と中国公船が往来する危険水域と化した。地元漁師が操業する『波』は高いままだ」。与那国町漁業協同組合の嵩西茂則組合長の表情は硬い。

 今年5月には町漁協所属の漁船1隻が中国公船に追尾され、島内に緊張が走った。好漁場な尖閣沖で操業を望む漁師は多いが「日中の対立に巻き込まれたくないと出漁を敬遠している」と実情を明かす。

 宮古島市の伊良部漁業協同組合では今も11月~3月末は毎年5~6隻が同諸島周辺で一本釣り漁を行う。尖閣沖は昔から沖縄の漁業者の生活を支えてきた重要な場所だといい、「私たちが漁をすることで日本の領海を守ってきたという自負もある。子や孫に漁場を残すためにも安全な環境にしてほしい」と話した。