社説

社説[尖閣 漁船衝突10年]中国の「自制」求めたい

2020年9月9日 05:00

 尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件から10年となる。この間、中国公船による領海侵入が繰り返されるなど、周辺海域は緊迫した状態が続く。懸念されるのは偶発的な衝突だ。

 2010年9月7日、尖閣諸島・久場島沖の領海内で中国のトロール漁船が第11管区海上保安本部の巡視船に衝突し、中国人船長が公務執行妨害容疑で逮捕された。

 那覇地検は船長を処分保留で釈放するが、事件以降、尖閣の領有権を主張する中国漁業監視船がたびたび姿を現すようになった。

 12年に日本政府が国有化してからは、領海侵入が「常態化」。日中関係は急激に悪化し、中国各地で反日デモも相次いだ。

 さらに今年4~8月、周辺海域で過去最長となる111日連続で中国公船を確認している。

 日本が実効支配する現状の変更を狙い、領有権の既成事実化を図ろうとする動きである。

 力を背景にした中国の大国外交は南シナ海でも活発だ。中国軍は8月、中国本土から中距離弾道ミサイル4発を南シナ海向けに発射し、米軍をけん制した。

 経済力、軍事力を誇示し、挑戦的にふるまう中国の大国外交は「戦狼(せんろう)外交」と呼ばれる。

 米国では「南シナ海が中国の湖になる」との警戒感が高まっており、新冷戦の様相を呈し始めている。

 力による現状変更は危険だ。中国にはあらためて「自制と協調」を強く求めたい。

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 県内漁業関係者も不安を募らせている。

 今年5月、中国海警局の公船2隻が、与那国町漁協所属の漁船に接近し追尾するという「威嚇行為」が明らかになった。

 問題を受け県議会は、日本政府に対し、周辺の領海や排他的経済水域での安全確保を要請する意見書を全会一致で可決した。「威嚇行為は、さらなる不測の事態を招くおそれがあり、断じてあってはならない」と批判する。

 尖閣諸島周辺の海域は漁業者にとってかけがえのない生活圏である。その視点に立てば対話によって共通の利益を見いだすことは可能なはずだ。

 地元漁業者の「あおり立てる声が一番怖い。何か起きたとき、真っ先に影響を受けるのが八重山のウミンチュ。外交を通して冷静に解決してほしい」との指摘を重く受け止めたい。

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 米国は対中政策を従来の「関与政策」から「競争政策」に転換した。中国民主化への期待がしぼみ、中国封じ込めの強硬路線に舵(かじ)を切ったのである。

 大統領選で誰が当選しても対中政策に大きな変化はなさそうだ。

 一方、日本では安倍晋三首相の辞意表明に伴い、近く新たな政権が誕生する。中国との間合いの取り方は新政権の最も重要な外交課題となる。

 東シナ海を「平和の海」にするような、日本ならではの立ち位置を追求してもらいたい。

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