社説

社説[辺野古設計変更縦覧]肝心な点があいまいだ

2020年9月10日 05:00

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局が県に提出した設計変更の承認申請書の告示・縦覧手続きが始まった。施工主である防衛局が承認を求めた工事内容の変更点が、誰でも閲覧できるようになった。

 変更の最大の焦点は、埋め立て区域の大浦湾側に広がる軟弱地盤への対処である。防衛省は地盤改良工事を追加したが、調査データに基づく軟弱地盤の面積や深さのほか、海底に打ち込む大量の砂杭(ぐい)の本数や半径、間隔などの詳細な記述がない。肝心な部分が抜け落ちている。

 軟弱地盤は最深部で海面下90メートルまで広がっているとされる。一方、防衛省は77メートルと主張し、認識に隔たりがある。国内の作業船で対応可能な深度は70メートル。防衛省は70メートルまでの地盤改良で建設は可能としてきた。だが、その根拠が示されなければ、安全面への懸念は払拭(ふっしょく)されない。

 立石雅昭新潟大名誉教授らの専門家が「震度1以上の地震で護岸崩壊の危険性がある」と指摘した点への言及もない。耐震設計に関し「非科学的手法で算定している」との批判もある。活断層の存在も指摘される中、防衛省はこれらの声に真摯(しんし)に向き合い、説明を尽くす必要がある。

 これまでにない作業手順も示された。水深が深い一部区域は、外周護岸で囲む前に土砂を投入すると記載。汚濁防止膜で汚水の濁りの拡散を防ぐとしている。カーテンのような膜を海底まで垂らしたとしても完全に防げるのか。長期化する工期の短縮を何より優先しているのではないか。

■    ■

 防衛省は設計変更に伴い、ジュゴンなどの生物や環境への影響は「変更前と同程度またはそれ以下」としている。果たして、そうか。

 埋め立てに使う土砂の採取場所として、県内で新たに6市町村を明記。従来の3市町村と合わせ、県内全域から採取できる計画となっている。地盤改良に用いる海砂は、県の年間採取量の2年分を超える膨大な量に上るとされ、環境への悪影響が危惧される。

 本島近海で確認されたジュゴン3頭のうち、1頭は2019年3月に死んだのが確認され、残り2頭も消息が分からない。今年2~6月に工事海域付近でジュゴンの鳴音のようなものが確認されたが、フロートなどの工作物の音である可能性も否定できない。今後、作業船約100隻が稼働する計画も示されている。工事がジュゴンに与える影響を再評価するよう求める県の主張はもっともだ。

■    ■

 防衛省は当初、埋め立て工事に着手する区域として、大浦湾側から始める計画だったが、実際は順番を変え、南側の辺野古漁港側から始めた。今回の変更申請書で事後的に記載し、修正した形だが、そもそも工事の進め方について、承認権者である県側と認識の齟齬(そご)がある。

 ましてや、広範囲の軟弱地盤の地盤改良という大規模な工事を行うのであれば、軽微な変更では済まない。ジュゴンなどの希少種や自然環境への影響を含めて、環境影響評価(アセスメント)からやり直すのが筋だ。

もっと詳しく。有料会員ならこんな記事も読めます。

沖縄の米軍基地の集団感染 発端は米本土部隊から

報告書から異例の「辺野古」削除 海兵隊の沖縄への強いこだわり

「翁長が恋しいです」流れ呼んだ妻の訴え 沖縄県知事選

月額550円で有料記事が月100本読み放題の「ライトプラン」もございます。 

 
連載・コラム
きょうのお天気