白く変色し溶けてしまった海ブドウや成長が止まり枯れたモズク。タコやサザエなどを捕る潜水漁業者は視界が悪く漁に出られない。豪雨の度に流れ出る赤土の被害に宜野座村の水産業が悲鳴を上げている。ある海ブドウ養殖業者は台風8~10号で流出した赤土による被害額を約500万円と試算する。村は対策に力を入れてきたが、現場からは今後の経営に対する不安の声が漏れる。(北部報道部・西倉悟朗)

台風8号の豪雨による赤土流出で濁った海ブドウのいけす=8月27日、宜野座村

台風8号の後、海に赤土が流れ出す中港川の河口=8月26日、宜野座村

台風8号の豪雨による赤土流出で濁った海ブドウのいけす=8月27日、宜野座村 台風8号の後、海に赤土が流れ出す中港川の河口=8月26日、宜野座村

 同村漢那で15年前に海ブドウの養殖を始めた男性は豪雨の度に、流れ出た赤土の影響で商品価値のなくなった海ブドウを廃棄している。平均でも年間で20トン以上を廃棄し、被害額は年に2千万円を超えるという。

 海ブドウ養殖には海から吸い上げた海水を使う。海ブドウに赤土が付着すると、光合成ができなくなり白く変色して溶けてしまう。そうなるとほとんどの海ブドウを廃棄にするため、収穫のために雇っている約40人の従業員も休ませている。男性は「どうにか改善されないと、ここで生産を続けるのは厳しい」と吐露した。

 モズクを養殖する村漁業協同組合の仲栄真盛昌組合長(70)は「海水が赤土で濁り日光が遮られると、モズクの生育が悪くなって枯れてしまう」と説明。「規模拡大もしたいがこの状況では到底無理」と肩を落とす。

 今期(4~7月)赤土の影響で枯れたモズクは全体の1割以上で、被害額は1千万円を超えた。赤土の付着が原因でサンゴが死滅し、漁場から魚が減ってしまうことも懸念する。タコやサザエなどを捕る潜水漁も赤土で視界が悪くなるとできなくなるという。

 村は赤土流出防止のため工事業者への対策の指導と実施の確認、流出が確認された農家などに、グリーンベルトの苗やビニールマルチの無償提供、畑に溝を掘って流出を防ぐ工事の費用負担など対策を講じてきた。2015~19年の5年で農家への支援件数は24件から190件へと増えた。

 當眞淳村長は9日、村議会9月定例会一般質問で「対策はしてきたが、近年の集中豪雨には対応できていないのが実情。今後も県と連携して取り組みたい」と答弁した。

 水産業関係者は「被害が減少した実感はない」と口をそろえる。仲栄真組合長は「いつまた雨が降って赤土が流れ出すのかと不安で、精神的な負担も大きい。村はまず現場の声を聞いて、被害の実態を把握することから始めてほしい」と訴えた。

 県漁連の調査によると、県内の漁協で台風8~10号で赤土流出による具体的な被害が報告されたのは宣野座村漁協だけだった。