沖縄県は、宮古島市の下地島空港に「宇宙港」の機能を整備することで、名古屋市のベンチャー企業PDエアロスペースと基本合意した。

 同社は下地島空港を発着する宇宙航空機を使った宇宙旅行を2025年にも始めたい考えだ。

 到達高度は100キロ、無重量の宇宙空間を約5分間体験できるという。実現すれば有人宇宙旅行の拠点としてはアジア初となる。旅行費用は1人1千万円を大きく超す見通しで、国内だけでなくアジア圏の富裕層をターゲットに想定している。

 下地島が「宇宙に行ける島」となる計画にはロマンを感じるものの、未知数な部分が多い。宇宙ビジネスは世界的に動きが活発化し競争が進んでいる。事業には巨額の費用も必要だ。

 1979年に開港した下地島空港は、国内で唯一の民間ジェット機用のパイロット訓練飛行場として利用された。しかし、フライトシミュレーター訓練の普及などで2013年度までに航空会社が相次いで撤退し、その後の活用法が懸案となっていた。

 県は民間企業による事業案を公募した。三菱地所(東京都)がターミナルを整備し、19年3月、「みやこ下地島空港ターミナル」が開業した。

 成田や関西との県外路線、香港との国際路線が運航され、プライベート機も受け入れている。だが、コロナ禍で一部運休するなど利用が低迷しているのが実情だ。

 そのさなかに民間事業者が同空港を活用する第2期事業として基本合意されたのが、宇宙港事業である。

■    ■

 下地島空港を巡っては気になる動きもある。

 自民党の国防議員連盟が先月開いた会合で、自衛隊が下地島空港を使用できるようにすべきだとの声が相次いだ。尖閣諸島周辺の接続水域で中国海警局の船の航行が繰り返されていることを受け、自衛隊機による監視・警戒活動が念頭にあるとみられる。

 しかし、自衛隊機の利用を認めれば、この地域の緊張をかえって高めかねない。

 下地島空港については「屋良覚書」「西銘確認書」が存在する。1971年に屋良朝苗行政主席が国と交わした覚書も、79年に西銘順治知事が国と交わした確認書も、下地島空港を軍事目的で使用しないことを確認している。

 にもかかわらず軍事利用を意図する言動が、何度も繰り返されてきた。「覚書」は今なお有効であり、民間空港として新たな活用が進められている。今後も平和利用の原則を貫くべきだ。

■    ■

 2015年の伊良部大橋開通などが後押しし、宮古観光は大きく伸びてきた。その中で今後、下地島空港をどう活用するかは離島振興の観点からも極めて重要だ。

 県は今後も新たな事業を公募する考えで、観光や関連企業の誘致に期待している。

 宇宙港に対しては「県内産業への波及効果が不透明だ」との冷静な見方もある。次期振計の中での位置付けや、どのように地域の振興に結び付けるかもきちんと示してほしい。