[新型コロナ 沖縄の今]
新型コロナウイルスの影響で、看護師や救急救命士などの国家資格取得を目指す学生が医療機関で実習を受け入れられない状況が続いている。国は学内実習などの代替の講義で国家試験の受験資格を得られる特例措置を通達しているが、学生からは「現場でしか経験できないことも多い」と不安の声が上がる。各養成校では現場に近づけた実習の試行錯誤が続くが、現場で感じる不安や葛藤などを体験することは難しいという。(運動部・新崎哲史)
■受け入れ困難
那覇看護専門学校では、今年1~3年生の現場実習が中止になった。最終学年の3年生は例年、6カ月間の実習が組まれているが今年は病院側から「受け入れは困難」と告げられた。
県の緊急事態宣言後は学内授業からオンラインでの講義に切り替えた。講師が患者役を演じたり、訪問看護の様子を撮影して演習で学生と共有したりするなど工夫を続けている。
「この患者さんはどう対応したらいいかな」。講師がパソコンの画面越しに質問すると、学生はフリップを画面に映し、患者や家族のケアを発表する。
3年の國吉夏凛さん(21)は「グループでの議論が増え、一つ一つのテーマを深く学べる」としながらも「このまま現場に入って環境の変化についていけるかな」と不安も口にする。
久志篤子学校長は、卒業までに実習の機会を設けたいとし、「不安な学生も多いが、例年より講師が一人一人に向き合っている。できないことより、できることの意識付けを学生にも伝えたい」と強調した。
■現場での体験
県立看護大学でも遠隔での実習に切り替え、マネキンを使った術後のチューブ装着などを実施する。例年と比べ準備時間が2、3倍かかる状況だという。
講師からは「実習病棟の場面設定などである程度、オンラインで実習は可能」との声もあるが「現場で感じる不安や葛藤などを体験させる点では限界を感じる」と課題も上がっている。
救急救命士や臨床工学技士を養成するSOLA沖縄学園でも現場実習が中止になった。学内実習を検討するが、担当者は「臨床現場にどこまで近づけた内容にできるか、大きな壁を感じる」と漏らす。今後、実習を実現させる方向で医療機関と調整している。「学生の健康が第一。だが学びの保障も重要で日々苦慮している」とコロナ収束を願った。