非常に強い勢力で大東島に甚大な被害をもたらした台風10号。「特別警報級」の勢力として厳重警戒が呼び掛けられ、一時は「中心気圧915ヘクトパスカル、中心付近の最大風速55メートル」と予想されたが、県内で特別警報の発表はなかった。特別警報は台風が通過する地域にとって「数十年に1度」の強い台風かどうかで指標が作られ、その基準となる「中心気圧」「最大風速」の数値が沖縄と本土で違うからだ。(社会部・光墨祥吾)

気象衛星ひまわり8号が撮影した5日午後5時の衛星画像。沖縄地方に台風10号が近づいている

台風等を要因とする特別警報の指標(発表条件)

気象衛星ひまわり8号が撮影した5日午後5時の衛星画像。沖縄地方に台風10号が近づいている 台風等を要因とする特別警報の指標(発表条件)

 「特別警報級の勢力でかなり接近し、記録的暴風となる見込み」。4日午後、那覇市の那覇第一地方合同庁舎。沖縄気象台の志堅原透予報課長は台風10号の会見でそう説明した。

 当時、勢力が最も強くなるのは6日午前9時で「中心気圧915ヘクトパスカル、中心付近の最大風速55メートル」との予報だったが、「特別警報級」で接近する、との表現にとどまった。

 一方、気象庁は翌5日午後に会見。台風10号は6日夜に中心気圧930ヘクトパスカルで鹿児島県に接近または上陸する恐れがあるとして「特別警報を発表する可能性がある」と伝えた。

 なぜ、勢力が弱まっている鹿児島県に特別警報の可能性が示され、沖縄地方で示されなかったのか。

 気象庁によると、特別警報の指標は「伊勢湾台風級」とされる「中心気圧930ヘクトパスカル以下または最大風速50メートル以上」で接近や上陸が予想される場合だ。

 だが沖縄地方や奄美地方、小笠原諸島は「勢力の強い台風の襲来する頻度が本土より高い」(気象庁)として「中心気圧910ヘクトパスカル以下または最大風速60メートル以上」が特別警報の指標になっている。その地域にとって「数十年に1度」の強さなのかが発表の分かれ目で、接近や上陸の頻度が指標に結び付いている形だ。

 琉球大学理学部の山田広幸准教授(気象学)は「沖縄地方と本州が同じ基準だと、頻繁に特別警報が発表されることになる。いわゆる『オオカミ少年』になり、特別警報の意味を成さなくなる」と指摘する。

 沖縄地方はこれまで何度も猛烈な台風を経験し、コンクリートの建物が主流になった。一方、本州には瓦屋根の家もある。「耐性が違うため基準が違うのは理にかなっている」とし「基準の違いは、発生場所によって台風の勢力や発達具合、危険のレベルが変わることを示していると言える。日本の形は縦に長く、あらゆる災害で地域差は生まれてしまう」と話した。

 気象庁は今後、頻度だけでなく、被害の大きさや被害の起こりやすさに応じた指標の作成についても検討を進めているという。