昨年10月に焼失した首里城。再建への願いを込めて描かれた絵がSNSを中心に話題を読んでいる。描いたのは兵庫県に住む柳生千裕(やぎゅう ちひろ)さん(11)=小学6年生。絵は今年10月から沖縄を中心に発売される2021年版の「沖縄手帳」の挿絵にも採用されている。自閉症スペクトラム(ASD)を抱える千裕さんが首里城を描くことになったきっかけや手帳を手がける発行人の真栄城徳七さん(69)にオファーまでのいきさつを聞いた。(デジタル部・比嘉桃乃)
千裕さんが絵を描き始めたのは保育園の頃。最初は鉛筆やマジックで「棒人間」を描くことが多かったというが、9歳の時に父の尚央(ひさお)さん(40)からカラーマーカーの「コピック」をプレゼントしてもらったことで、カラフルな世界を表現することに夢中になった。

<燃えてしまって悲しい気持ちに> 沖縄からの声に背中押され
生き物や想像上の「オッサン」を描くことが多かった千裕さんが首里城を描き始めたのは昨年11月。きっかけは、作品を発表しているTwitterアカウントに沖縄のフォロワーから届いたDMだった。
<首里城が燃えてしまって悲しい気持ちになっている。ぜひ描いてほしい>
その言葉に背中を押された千裕さん。これまで沖縄を訪れたことはなかったが、すぐに描くことを決めた。
自分でインターネットで首里城や沖縄の花や生き物を調べ、絵の構想を練った。
「一番難しかった」と振り返るのは首里城の色。鮮やかな色をどう表現するのかに頭を悩ませながら1カ月かけて自分が思い描く首里城を完成させた。

作品のタイトルは「いつかその日まで」。再建への願いを込めた。
絵には首里城の正殿だけでなく、ハイビスカスやデイゴ、石畳など沖縄のさまざまな要素も表現。よく見ると絵には漢字もちりばめられている。
努、心、支、笑、彩
これもすべて千裕さんが考えた言葉だ。
今年1月に開いた個展では「いつかその日まで」も展示。開催期間中に「首里城を描いてほしい」と頼んだ沖縄のフォロワーも訪れ、「元気づけられた」と直接声をかけてもらったという。
千裕さんは沖縄手帳への採用に「絵を多くの人に届けられてうれしい」とにっこり。「絵を見た沖縄の人たちが明るく、前向きになってもらえたら」と話した。
息子が描いた首里城の絵が2021年度版の沖縄手帳に掲載される事になりました!沖縄手帳は沖縄はもちろん全国にファンのいる素敵な手帳で、毎年アールブリュット作家さんの作品が掲載されています。
— 柳生千裕 (@nao_yagyu) June 20, 2020
息子の絵に込めた想いが少しでもたくさんの方に届く事を願っています。#11歳#沖縄手帳#首里城 pic.twitter.com/Z4QKE0gLEZ