社説

社説[ジャパンライフ事件]「桜」は終わっていない

2020年9月19日 05:00

 磁気商品の預託商法で多額の資金を集め、2017年破綻した「ジャパンライフ」元会長の山口隆祥容疑者ら14人が詐欺容疑で逮捕された。債務超過の実態を隠し顧客から金をだまし取った疑いだ。

 山口容疑者らは、高齢者中心に訪問販売で磁気ネックレスやベストの購入を勧誘し、購入後第三者に貸し出す形で年6%の配当を得られるとの「レンタルオーナー制度」を展開していた。実際は商品はほとんど存在せず、当初から新規契約代金を配当に回していたとみられる。被害は44都道府県の延べ約1万人、計約2100億円に上るという。

 預託商法ではこれまで和牛を商品として扱う事業などが問題となり、詐欺や出資法違反で立件されてきた。ただ、ジャパンライフの場合「政官界との関わり」を積極的に求め、利用したことに特異性がある。

 同社は05~17年度まで、内閣府や消費者庁の元幹部らを顧問に迎え多額の顧問料を払っていた。15年には、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」の招待状をチラシに印刷し、勧誘セミナーで使用した。

 野党などは、招待状が同社の宣伝に利用され、被害の拡大につながったと批判する。また03年のレンタルオーナー開始から15年の消費者庁立ち入り検査まで、同社には行政の指導や規制が事実上行われず被害を防げなかったのも、こうした政界との関係が影響したと指摘されている。

 今後類似の事件発生を防ぐためにも、ジャパンライフと政治・行政の関わりをきちんと解明する必要がある。

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 菅義偉首相が来年以降「桜を見る会」を中止すると表明したばかりである。政府が昨年11月から進めていた「招待基準の明確化やプロセスの透明化などの全般的な見直し」も中止とする今回の決定は唐突な印象を受ける。

 加藤勝信官房長官は18日、安倍前首相の推薦枠で山口容疑者が招待されたとの疑惑について、招待者名簿再調査に否定的な考えを示した。公文書管理法に違反して名簿が廃棄されたためというが、本末転倒というほかない。

 税金で開く行事に安倍前首相が地元支援者を多数参加させた問題、発覚後に名簿の保存期間を1年未満とした経緯なども未解明のままだ。

 会は「各界においてさまざまな功績、功労のあった」人たちを慰労するためという。桜の会が中止されても、誰が何の功労を理由に山口容疑者を招待したかが明かされない限り再発は防げない。

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 菅政権は、疑惑にふたをする前政権の体質も引き継ぐつもりなのだろうか。

 元法相の河井克行被告と妻で参院議員の案里被告による公職選挙法違反事件で、自民党資金が買収の原資に充てられたとの疑惑に、党総裁でもあった安倍前首相は正面から答えなかった。統合型リゾート(IR)を巡る汚職事件では、政府の施策に与えた影響は検証すらされていない。

 どの事件も「前政権の出来事」で終わらせていいものではない。菅首相は名簿の再調査を行い、国会の場で説明すべきである。

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