沖縄戦を生き延び、戦後の混乱を乗り越え、迎えた老後だというのに、あまりに過酷な現実だ。

 本紙の連載「『独り』をつないで ひきこもりの像」は、80代の親が、収入のない50代の子どもの生活を支え、行き詰まる「8050問題」の現場を映し出す。

 トイレのない3畳の「聖域」にひきこもる49歳の息子。用を足したバケツを片付ける83歳の母親。

 子は母に負担をかけているという負い目、母は家庭の経済事情から高校中退を促した後悔をそれぞれ感じながら声を上げられず、公的な支援につながらないまま、共倒れ寸前まで追い詰められた。

 貧困を背景に社会から孤立し、高齢化していく親子の姿に胸が締め付けられる。

 内閣府が2018年12月に初めて実施した実態調査では、40~64歳の中高年者の引きこもりは推計で61万3千人に上った。

 驚くべき数字だ。

 「8050問題」はかねて関係者が指摘していたが、いまやっと、社会問題として認識されるに至った。

 県内では、ひきこもり状態にある40歳以上はおよそ7千人と推計される。実態は分かっていないが、貧困などが背景にあり、沖縄は他府県よりリスクが高いと指摘する声もある。

 「子どもの貧困」もそうだが、家庭の問題は、外から見えづらい。ユイマール(助け合い)の伝統がある沖縄でも、血縁や地域のつながりは弱まり、低賃金で経済的に支え合えない状況が生まれている。

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 ひきこもりの問題を20年以上取材するジャーナリストの池上正樹さんは著書で、ひきこもりの原因は、日本の社会構造のゆがみや社会風潮、価値観に起因していると指摘する。

 1度レールから外れるとなかなか元に戻れない社会構造。孤立は本人の努力不足からくるという自己責任論の社会風潮。ひきこもりを「家の恥」とする価値観。

 こうした日本社会の在り方が、困っていてもSOSを出せず、支援につながりにくい現状を生んでいるとする。

 「自助・共助・公助」の社会像を掲げた菅義偉首相は就任会見で「まず自分でできることは自分でやってみる」と自助の必要性を強調した。

 自己責任論を助長しかねない発言だ。コロナ禍で経済格差が広がる中、政治がやらなければならないのはむしろ「公助」である。

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 83歳と49歳の親子は、福祉行政関係者の連携で支援につながり、社会との関わりを取り戻しつつある。

 8050問題では複合的な問題を抱える家庭が多いが、行政の縦割りでたらい回しにされたり、情報が共有されず、支援につながらないケースも少なくない。

 政府は来年4月に社会福祉法を改正し、市町村が一括して相談に乗れる支援体制を構築できるよう財政支援する。

 今日は「敬老の日」。ひきこもりの高齢化が進む中、親も子も安心して暮らせる社会へ、公助を編み直すべきだ。