社説

社説[自衛隊電子戦部隊]「負担軽減」に逆行する

2020年9月23日 05:00

 防衛省が、電磁波を駆使して相手の攻撃を防ぐ「電子戦」の専門部隊を、県内に配備する方向で検討していることが分かった。既存の陸上自衛隊施設内に設置するとみられるが、どの施設なのかや時期など具体的な内容は明らかになっていない。

 電磁波は宇宙やサイバー空間と並び、防衛省が強化に乗りだしている新たな領域の一つだ。

 来年春には、陸自の電子戦専門部隊を熊本県内の健軍駐屯地に発足させる。侵攻勢力の電波を妨害し無力化できる航空機の研究開発も進める。来年度予算の概算要求では、東京都内の朝霞駐屯地に専門部隊を新設する関連経費を計上する方針だ。

 強化を急ぐ背景には「中ロに比べ、能力の蓄積が大幅に遅れている」(陸自幹部)との現状認識がある。

 中国軍は日本周辺で電子戦機などを飛行させ、自衛隊や米軍の電波情報を収集しているとみられる。ロシア軍は2014年、ウクライナ軍に電磁波攻撃を仕掛け、指揮統制を遮断して戦力の発揮を妨害したという。

 こうした中ロの動きをにらみ来春編成される専門部隊は、離島奪還の専門部隊「水陸機動団」と連携し、前線で自衛隊の通信を防護しつつ、敵のレーダーやミサイル誘導用電波を妨害する役割を担う。

 陸・海・空という従来の枠を超えた新たな領域が、安全保障上の課題となっているのは確かだ。だが、前のめりな姿勢には軍拡競争に巻き込まれる懸念も拭えない。

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 県内に電子戦の専門部隊を構える計画は、海洋進出を強める中国を念頭に置いた自衛隊の「南西シフト」の一環とみられる。

 気になるのは、中国をにらんで、南西諸島の軍事的な機能を強化しようとする動きが他にも見られることだ。

 自民党の国防議員連盟は、尖閣諸島の有効支配強化に向け、宮古島市の下地島空港を自衛隊が使用できるよう整備を求める提言案をまとめた。尖閣までの近さと、F15戦闘機が離着陸できる3千メートル級の滑走路があることを踏まえたものだ。

 米海兵隊トップは、沿岸や離島での戦闘能力を強化した部隊「海兵沿岸連隊」を2027年までに沖縄に配備すると明言している。

 自衛隊の任務を拡大した安全保障関連法の成立以降、自衛隊と米軍の軍事的一体化が進んでいる。その中で、このような動きは基地機能の強化であり県民が求める負担軽減に逆行する。

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 政府が断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画でも地元で懸念が噴出したように、電磁波による健康への不安も拭えない。住民への説明なしに新設ありきで進めるようなことがあってはならない。

 菅義偉首相は、どのような外交を目指すのか構想を明確に示していない。防衛力の増強だけで対応するのは地域の不安定化を招きかねない。東アジアの軍備競争にブレーキをかける役割こそ果たすべきだ。

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