社説

社説[デジタル庁新設へ]信頼得られる構想示せ

2020年9月25日 05:00

 菅義偉首相が「デジタル庁」の新設に向けて作業を加速させている。政権の目玉に掲げ、複数の省庁にまたがるデジタル関連の政策を担う組織を目指すという。

 ただ、同庁がどんな施策を展開し、どう機能していくかの具体像はまだ見えない。行政の効率化やサービス向上は待ったなしだが、その前提は国民が信頼できる体制とシステムの提示である。

 創設を急ぐ背景には、新型コロナウイルス対策を巡り、給付金や補助金支給のオンライン申請でシステムの不具合が多発し、混乱を招いたことがある。コロナ対策を話し合う省庁の横断的なテレビ会議を開けないこともあった。行政のデジタル対応が遅れた要因の一つに、菅首相は各省庁の「縦割り」を挙げた。

 非対面形式が求められるコロナ禍では、行政手続きのほか、医療、福祉、教育などさまざまな分野でデジタル化の推進が必要となる。国民が利便性を実感できるようになれば理解も得られるだろう。

 だが、個人情報の一元化が進むことの懸念も払拭(ふっしょく)できない。一元化が進めば、流出のリスクも増す。情報漏えい防止や個人情報を保護する高度なセキュリティー体制づくりをどう進めるのか。

 菅首相は「官民を問わず能力の高い人材が集まり、社会全体のデジタル化をリードする強力な組織とする必要がある」との考えを示した。

 政府は20年前のIT基本法成立以来、デジタル推進の旗を振ってきたが、大きな成果はみえない。これまでの施策の検証作業も急がれる。

■    ■

 気になるのはマイナンバーの活用促進だ。政府は来年3月以降、健康保険証と一体化し、運転免許証との連携も検討している。買い物でポイントを還元する総務省の「マイナポイント」事業も始まっている。

 普及率が2割にも満たないカード利用の拡大や行政のオンライン化を促す狙いがある。

 もともとマイナンバーカードは税、社会保障、災害対策の分野で活用が始まった。だが、情報流出の懸念や情報管理などへの不安は根強く、普及は低迷している。

 マイナンバーカード制度の多機能化で、国が網羅的に個人情報を把握し、管理する不安は尽きない。

 専門家からも目的がはっきりしないひも付けや個人の信条、嗜好(しこう)、生活環境の情報から人物像を描く「プロファイリング」の危険性など多くの懸念も指摘されている。

■    ■

 政府はデジタル庁新設に向け、来年の通常国会へ関連法案を提出し、来年度中の設置を予定する。

 IT技術は目まぐるしい早さで進化する。同庁のトップには民間人を起用する方針で、幅広いアイデアと柔軟な視点を取り入れることは言うまでもない。

 予算や権限などをどう確保するか課題は山積みだ。新政権の実績づくりを急ぐことは当然あってはならない。

 行政の縦割りの弊害を取り除く改革とするなら、安心と信頼を提供する国民本位の改革にするべきだ。

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