社説

社説[日韓首脳電話会談]関係改善へ対話重ねよ

2020年9月26日 05:00

 菅義偉首相は韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と電話で会談し、懸案を幾つも抱える対韓外交をスタートさせた。両国首脳の対話は9カ月ぶりだ。

 会談で菅首相は、元徴用工訴訟問題などを念頭に「非常に厳しい状況にある両国関係を、このまま放置してはならない」と韓国側に対応を求めた。

 文大統領は、両政府と全ての当事者が受け入れられる「最適解を一緒に探していくことを願う」と述べたという。

 約20分という短い時間だったものの、安倍前政権からの冷え切った日韓関係をみれば、首脳同士の対話が実現したことは一歩前進だ。

 植民地時代の強制労働の賠償を巡る元徴用工訴訟問題で、韓国最高裁は2018年、被告の日本企業に賠償を命じた。

 原告団は判決に基づき差し押さえた日本企業の資産を売却する手続きを進めている。

 一方、日本政府は1965年の日韓請求権協定に基づき既に解決済みとの立場だ。判決に「国際法違反だ」と強く反発しており、資産が現金化されれば対抗措置に踏み切る可能性を示唆する。

 もし現金化に至れば、互いの報復合戦に発展する恐れが強い。対立が泥沼化し、後戻りできなくなる事態さえ想定される。

 それぞれの最適解を目指すというのであれば、文大統領はひとまず何らかの形で現金化の手続きを凍結すべきだ。立場の異なる関係者が冷静に話し合える時間や場を設け、具体的な案を示してほしい。

■    ■

 日韓の間では日本軍「慰安婦」を巡る問題も、とげとなって突き刺さる。

 両政府は2015年に「最終的かつ不可逆的な解決」で合意した。日本は軍の関与と政府の責任を認め、安倍晋三首相が「おわびと反省」の気持ちを朴槿恵(パククネ)大統領に伝えた。

 しかし、その後就任した文大統領は、日韓合意を前政権の「積弊(長年積もった悪弊)」と位置付け、清算の対象とした。合意を受け、元慰安婦の女性らへの現金支給事業を担った財団の解散を決めたのだ。財団には日本政府が10億円を拠出していた。

 日韓合意は両政府が問題解決へ向け歩み寄ってなし得たものである。大切にしなければならない。

 当時、安倍首相は「元慰安婦の方々の筆舌に尽くしがたい苦しみを思うと心が痛む」と電話会談で朴大統領に表明した。菅首相も、その思いを継承し、尊厳を傷つけられ心に傷を抱えながら生きる女性たちに心を寄せてほしい。

■    ■

 内閣府が昨年12月に発表した外交に関する世論調査で、韓国に親しみを感じないとする回答は7割に上った。「嫌韓感情」の高まりがうかがえる。だが、外交は感情論を排し、逆にもつれた感情を解きほぐすような冷静さが求められる。

 悪化する米中関係や、挑発行動を繰り返す北朝鮮への対応を考える上でも、日韓の関係改善は欠かせない。

 菅首相は対話を続け、一歩ずつでも前に進める外交に努めてもらいたい。

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