社説

社説[ヘリ炎上 書類送検]捜査阻む「合意」撤廃を

2020年9月27日 06:00

 東村高江の民間地に米軍の大型輸送ヘリCH53Eが不時着し、炎上した事故で、県警は容疑者不詳のまま航空危険行為処罰法違反の疑いで書類送検した。

 3年前の10月、青々とした牧草地の真ん中で、黒煙を巻き上げるヘリの映像に打ち震えたのを覚えている。民家から300メートルしか離れていない場所だった。県道からも近かった。住民を不安に陥れ、県民に強い衝撃を与えた事故である。

 重大事故だったにもかかわらず容疑者を特定できなかったのはなぜなのか。捜査の前提ともいえる操縦士の氏名さえ明らかにされないというのはどういうことなのか。容疑者が特定されなければ、裁判で刑事責任を問うことも難しい。

 事故が起こったのは基地の外、住民が生活を営む民間地である。しかし米軍は即座に規制線を張り現場を封鎖。県警が立ち入ることができたのは事故から6日後である。

 日米地位協定は、基地外で米軍が警察権を行使する場合、日本側の取り決めに従うと規定している。

 だが現実には、米軍の同意がない限り、米軍の財産を捜索・差し押さえできないとする地位協定の「合意議事録」によって、日本側の捜査は大きな制約を受けている。

 加藤勝信官房長官は「日米地位協定などに基づき、米軍側から必要な協力を得ながら適切に捜査を進めてきた」と述べた。

 機体の捜査や乗組員の事情聴取など必要な協力が得られたのなら、容疑者不詳という結果にはならなかったはずだ。

■    ■

 事故について米側は、エンジン内部の漏電などにより火災が発生したとみられるが「損傷が著しく、根本的な原因特定には至らなかった」との調査結果をまとめている。パイロットは定められた手順に従い、乗員の対応も適切だったとも記している。

 県側が原因究明に関与できていない以上、米軍に都合のいいようにまとめ、発表しているのではとの疑念が当然湧く。なぜ起きたのかが分からないのでは、具体的な再発防止策を求めることもできない。

 容疑者を特定できないままの書類送検が続いている。

 2004年に沖縄国際大学構内へ大型ヘリが墜落した事故も、16年に名護市安部の海岸にオスプレイが墜落した事故も、氏名不詳で書類送検された。結果は不起訴処分である。

■    ■

 米軍が日本側の立ち入りを拒否する盾となっている合意議事録は、国会も通さずに日米の事務方が内々に策定したものだ。長らく非公開とされてきた。

 県民の財産が重大な被害にあっても、米軍の財産を優先する内容は、主権放棄に等しい。

 不平等な地位協定の抜本的な見直しは必要だが、米軍に特権を与えている合意が、それを骨抜きにする可能性がある。

 日本の捜査権にも関わる合意議事録にも切り込まなければならない。

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