人気俳優の竹内結子さんが40歳という若さで他界した。自殺とみられる。

 芸能界では7月以降、ドラマや映画で活躍する俳優の自殺が続き、驚きと悲しみが広がっている。

 対人関係の悩み、雇用不安や経済的困窮…。自殺は、さまざまな要因が複雑に絡み合って起きるケースが多い。悩みの深さは他人には見えにくい。

 相次ぐ著名人の自殺に加藤勝信官房長官は「悩みのある人が孤立しないように、(周囲が)温かく見守る社会を一緒に構築してほしい」と語り、相談窓口の活用を呼び掛けた。

 国内の自殺者は2019年、統計上過去最少となったが、警察庁によると今年7月から増加に転じ、8月は速報値1849人で、前年同月に比べ246人増えた。特に女性の増加が顕著で、前年比4割増の650人となった。

 自殺者の増加は、新型コロナウイルス感染拡大と無関係ではないだろう。

 外出自粛を余儀なくされ、親族にさえ会えない期間が続いた。休業で収入が減った人も多い。収束が見通せない中、不安感や閉塞(へいそく)感が社会に広がった。

 世界保健機関(WHO)は「自殺は、その多くが防ぐことのできる社会的な問題」と明言する。

 コロナ下、自殺対策はより重要な社会問題になっている。正面から向き合い、1人も取り残さない対策を模索したい。

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 WHOの自殺予防の手引きによると、自殺の危険が高い人の心理状態には、「生きたい」と「死にたい」という相反する願望が激しく揺れ動く「両価性」、「衝動性」、思考や感情、行為の幅が狭くなる「頑固さ」の大きく三つの特徴がある。

 うつ病やアルコール依存症も自殺のリスクを高める要因となる。

 自殺リスクが高い人への接し方で鍵になるのが、相手の訴えに真摯(しんし)な態度で耳を傾ける「傾聴」だ。

 悩みを誰かに話すことで、ストレスが和らいだ経験のある人は多いだろう。

 ただ、今、対面で話をしたり、聞いたりすることが難しい中、人と人とのつながりをどうつくるかは課題だ。

 対面に代わるユンタク(おしゃべり)の手段として、会員制交流サイト(SNS)やウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」なども有効だろう。

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 誰かとつながることで、自殺を思いとどまる人がいるかもしれない。砦(とりで)となるのが相談窓口だ。

 「いのちの電話」など民間の支援団体が運営する相談窓口はボランティアに支えられている。コロナ下、相談件数は各地で急増しているが、活動資金や人手不足の問題を抱える。

 国や自治体は公的な相談体制を拡充するとともに、民間を積極的に支援するべきだ。

 一人一人の命はかけがえのないものだ。1人のSOSも聞き漏らさず、安全網で受け止められる社会へ。できることに力を尽くしたい。