[反ヘイト 高まる気運](1)

ヘイトスピーチ街宣に対抗するカウンターは20週連続に達した=30日、那覇市役所前

 かつて陰湿なヘイトスピーチに染められていたガジュマルの木陰に今、鮮やかな「NO HATE」の旗が翻っている。

 毎週水曜日の那覇市役所前で、約6年前から続いてきたヘイト街宣。主催者は新型コロナウイルスの感染が拡大する中、「中国人は歩く生物化学兵器」などと叫び、差別と暴力の扇動を加速させた。

 5月の本紙報道を読んで危機感を抱いた市民が、対抗する行動「カウンター」をツイッターで呼び掛けた。それまで多くても数人だったのが毎週20人近く集まるようになり、街宣主催者は現れなくなった。

 40代の女性は定例街宣が続いていた時に、友人ら数人で「ヘイトはダメ」とプラカードを持って抗議したことがある。「だけど止めるには程遠かった。本当に止められる日が来るとは、感慨深い」と語る。

 5月20日から始まった定例街宣の阻止は9月30日、ついに20週連続に達した。女性は「完封」と書かれたプラカードを掲げた。ガジュマルの木陰は交流の広場としてすっかり定着した。

 7月29日。タイ人の女性が、おずおずと話し掛けてきた。「職場で差別されたら、どうしたらいいですか」。一人だけ名前でなく「おい」と呼ばれ、蹴られたことまであったという。

 労組や行政の相談窓口の電話番号を調べて伝える人がいた。上原カヨ子さん(78)は違った。自らの住所と電話番号を伝えた。驚く周囲をよそに「うちに遊びに来て。友達になりましょう」。笑顔になった女性はタイ語で感謝を伝えた。

 8月26日。台風が連れてきた豪雨の中、国吉洋見さん(74)は市役所前に足を運んだ。「こういう日だからこそ彼らが現れるかもしれない。こっちの意気込みを示す」。軒先で雨宿りしながらカウンターは続いた。

 「ウークイ」の9月2日。県外出身の石原博美さんは「ウチナーンチュは参加しにくいから」と仕事の有休を取った。普段は昼休みの1時間、弁当を持って駆け付け、木陰で食べてまたバスで職場に帰る。「差別には黙らない」と決意している。

 団体の支援はない。一人一人が個人としてやって来て腰掛ける。会話を楽しみ、気に入った本や映画を紹介する。通りすがりの人がお茶や菓子を差し入れしていく。

 「老若男女が集まり、ゆんたくできるいいコミュニティーになっている。マチヤグヮーみたい」と、仲村涼子さん(41)。唯一20週連続で参加している男性(48)は「思想も信条もみんなばらばら。差別は政治ではなく人権の問題だから」と話した。

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 那覇市役所前のヘイト街宣に対抗する機運が高まっている。市民、行政、議会の動きを取材した。(編集委員・阿部岳