社説

社説[学術会議任命拒否]学問の自由脅かす圧力

2020年10月3日 08:04

 菅義偉首相が、日本学術会議の新会員候補のうち6人の任命を拒否した。任命拒否は、現行の推薦制となった2004年以降で初めてだ。

 6人のうち岡田正則早大教授は、名護市辺野古の新基地建設を巡り、行政法学者の立場から政府方針に異を唱えた。本紙への寄稿では、県の埋め立て承認撤回を「法令に適合しない工事を止めさせることは、県の責任として当然に行うべき事柄である」と評価している。

 ほかの5人の候補者も、安全保障法制や「共謀罪」の制定などについて、それぞれ専門的見地から批判的な意見を述べていた。

 日本学術会議法は、学者による政府の政策提言機関である同会議を首相の所轄とする一方「独立して」職務を行うと規定している。政府も1983年の参院委で、会員候補につき「形だけの推薦制で、推薦された者は拒否はしない」と答弁していた。

 だが菅首相は記者団に「法に基づいて適切に対応した」と決まり文句を述べるだけで、政府が今回任命を拒否した理由の説明を拒んでいる。

 任命されなかった学者のうち、東大の宇野重規教授は、共同通信へのコメントで「民主的社会の最大の強みは、批判に開かれ、常に自らを修正していく能力にある。その能力がこれからも発展していくことを確信している」と指摘した。

 なぜ会議の独立性を侵し、6人について違法の疑いすらある任命拒否をしたのか。菅首相は記者会見などで国民に説明する責任がある。

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 人事を通じ異論を封じ込める手法は、菅首相の官房長官当時から多用されてきた。

 歯止めのないふるさと納税返礼品競争に規制をかけようとした総務官僚は主要ポストを外され、逆に森友学園問題で公文書改ざんを主導した財務官僚は昇格した。

 防衛装備庁が、軍事技術として応用可能な基礎研究への研究費支給を公募したのに対し、学術会議は2017年の声明で「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と批判した。同会議が防衛研究に後ろ向きとみる元防衛相は「変えるべきは変えていかねばならない」と首相判断を支持した。

 しかし同会議は政府の施策改善や社会的課題の解決を学術的に提言するのが役割で、政府に批判的内容が含まれるのは当然だ。耳に痛い提言をする識者を遠ざけるのが首相の目的なら、あまりに底が浅いと言うほかはない。

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 琉球独立学会に参画する学者に対する政府の科学研究費助成事業(科研費)の支給が一部で批判されたことがある。元「従軍慰安婦」を象徴する像が展示された「あいちトリエンナーレ」への国の補助金がいったん取り消されるなど学問や表現の自由に対する圧力が強まっている。

 政府による今回の学者の排除は、単に異論を封じるだけでなく憲法が保障する学問の自由を脅かす。

 戦前の滝川事件や天皇機関説事件のような弾圧にもつながりかねない極めて異常な事態だ。

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