社説

社説[学術会議人事介入]任命権乱用の疑義深く 

2020年10月7日 05:00

 いつの間に「政治介入」できるようになったのか。

 日本学術会議の人事を巡り政府は6日、内閣府の見解をまとめた2018年11月作成の内部文書を公表した。

 学術会議の推薦通りに任命する義務は首相にない、とする内容だ。「首相は人事を通じた一定の監督権行使ができる」と明記されている。

 1983年の参院文教委員会で、政府は「形だけの推薦制で、推薦された者は拒否はしない」と答弁していた。それがどのような経緯で変わったのか。

 政府は18年に解釈を「明確化」したと説明し変更を否定しているが、整合性に欠ける。秘密裏に法解釈を変更していた疑念が拭えない。任命権の乱用の疑いも持たれる。

 今回の新会員候補のうち、政府方針に異を唱えたことのある6人がなぜ除外されたかは依然として不明だ。

 菅義偉首相は内閣記者会のインタビューに6人の任命を拒否したことを事実上認めたものの、具体的な理由は語っていない。

 学術会議は、理由の説明と6人の速やかな任命を求めている。国民からも「なぜ」と疑問の声が上がる。

 「推薦された方をそのまま任命する前例を踏襲していいのかを考えた」「総合的、俯(ふ)瞰(かん)的な活動を求める観点から今回の任命を判断した」との菅氏の発言は意味不明だ。前例踏襲しなかった理由、「総合的」「俯瞰的」の内容を聞いているのだ。

 首相として説明能力を欠いていると言わざるを得ない。

■    ■

 人事を通し強権的に物事を進める政権の姿勢は、菅氏自ら官房長官として支えた安倍政権時から続く。

 まず思い出されるのは、「法の番人」と称される内閣法制局長官に、内部昇格の慣例を破り、集団的自衛権行使の容認に前向きな外務省出身者を登用した人事だ。その結果、集団的自衛権の行使容認は翌年、閣議決定された。

 官邸に近いとされていた東京高検検事長を次期検事総長に充てる目的で、従来の法解釈を変更して定年延長を閣議決定したこともある。

 中央省庁の幹部人事は内閣人事局に管理が一元化された。官僚が政権の顔色をうかがって萎縮し、忖(そん)度(たく)がはびこる要因となっている。

 政権の意に沿う人は重用され、異論を唱えると遠ざけられる。アメとムチを使い分ける手法を学術会議にも持ち込もうとしているのならば学問の自由は脅かされる。

■    ■

 学問は、さまざまな角度からの研究を通して新たな考え方が生まれ発展するものだ。多様性が欠かせない。菅氏には排除した6人を直ちに追加任命してもらいたい。

 学術会議には国の予算が年間10億円超出ている、と政府は強調する。税金が投じられているからこそ丁寧な説明が必要だ。組織の在り方に疑問を感じているのであれば、問題点を具体的に示し、開かれた場で議論してほしい。

 菅氏は、きょうとあす開かれる衆参両院の内閣委員会閉会中審査に出席するか、記者会見を開き、説明責任をしっかり果たすべきだ。

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