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焼け落ちた首里城 その時記者は? 衝撃的な一日に迫った写真

2020年10月8日 10:12

 昨年10月31日未明に発生した首里城火災を伝えた写真で構成する本紙の「焼け落ちた沖縄の象徴」が2020年度の新聞協会賞を受賞した。小型無人機ドローンで火災の決定的瞬間を圧倒的迫力で捉えた一枚や悲しみに暮れる女子高校生など、衝撃的な「一日」に多角的に迫った写真が高い評価を得た。写真部員はあの日、何を思いシャッターを切ったのか。掲載写真と撮影者の報告などで特集を組んだ。

焼け落ちた首里城正殿(中央)。手前の北殿、奥の黄金御殿や書院にも延焼し、激しく煙が上がった=2019年10月31日午前5時58分、那覇市首里当蔵町(小型無人機で金城健太撮影)

首里城焼失にショックを受け、守礼門前で涙を拭う首里高校の生徒=10月31日午前7時49分、那覇市首里金城町(田嶋正雄撮影)

炎上し、崩落する首里城正殿=10月31日午前4時33分、那覇市首里当蔵町(田嶋正雄撮影)

炎上し、崩落する首里城正殿=10月31日午前4時33分、那覇市首里当蔵町(田嶋正雄撮影)

首里城は正殿(中央)が完全に崩落。北殿(右)では消火活動が続いた=10月31日午前7時すぎ、那覇市首里当蔵町(小型無人機で金城健太撮影)

火災で赤く染まる空を見上げる地域住民ら=10月31日午前6時13分、那覇市首里真和志町(田嶋正雄撮影)

呆然(ぼうぜん)と立ち尽くし、ハンカチを目に当てる女性=10月31日午前7時半、那覇市首里真和志町(国吉聡志撮影)

首里城火災の取材に駆け付けた多くの報道陣=10月31日午後0時47分、那覇市首里金城町の守礼門前(下地広也撮影)

首里城の南側の住宅地。車のフロントガラスには飛散した燃え殻が降った=10月31日午前8時25分、那覇市首里金城町(下地広也撮影)

首里城火災を受け、保護者と共に登校する城西小学校の児童ら=10月31日午前8時半すぎ、那覇市首里真和志町(金城健太撮影)

金城健太

ドローンを離陸させる金城健太記者=9月7日、嘉手納町

田嶋正雄

与那嶺一枝編集局長

焼け落ちた首里城正殿(中央)。手前の北殿、奥の黄金御殿や書院にも延焼し、激しく煙が上がった=2019年10月31日午前5時58分、那覇市首里当蔵町(小型無人機で金城健太撮影) 首里城焼失にショックを受け、守礼門前で涙を拭う首里高校の生徒=10月31日午前7時49分、那覇市首里金城町(田嶋正雄撮影) 炎上し、崩落する首里城正殿=10月31日午前4時33分、那覇市首里当蔵町(田嶋正雄撮影) 炎上し、崩落する首里城正殿=10月31日午前4時33分、那覇市首里当蔵町(田嶋正雄撮影) 首里城は正殿(中央)が完全に崩落。北殿(右)では消火活動が続いた=10月31日午前7時すぎ、那覇市首里当蔵町(小型無人機で金城健太撮影) 火災で赤く染まる空を見上げる地域住民ら=10月31日午前6時13分、那覇市首里真和志町(田嶋正雄撮影) 呆然(ぼうぜん)と立ち尽くし、ハンカチを目に当てる女性=10月31日午前7時半、那覇市首里真和志町(国吉聡志撮影) 首里城火災の取材に駆け付けた多くの報道陣=10月31日午後0時47分、那覇市首里金城町の守礼門前(下地広也撮影) 首里城の南側の住宅地。車のフロントガラスには飛散した燃え殻が降った=10月31日午前8時25分、那覇市首里金城町(下地広也撮影) 首里城火災を受け、保護者と共に登校する城西小学校の児童ら=10月31日午前8時半すぎ、那覇市首里真和志町(金城健太撮影) 金城健太 ドローンを離陸させる金城健太記者=9月7日、嘉手納町 田嶋正雄 与那嶺一枝編集局長

■ドローン空撮の迫力信じ

金城健太記者(46)

 首里城が焼失した昨年10月31日。息を切らしながら龍潭に着いたのは午前4時50分ごろだった。炎を見上げる地域住民や警察官らで通りは物々しい雰囲気に包まれてた。

 すぐに小型無人機ドローンをセッティングし、離陸させた。「ブーン」と静かな羽音を鳴らしてドローンは龍潭上空を渡り、火災現場を目指す。機体の赤い灯火が水面を走った。

 夜明け前、那覇の街の真ん中で焼ける首里城がモニターに映し出された。奉神門の外にいる消防隊員が見える。大量の煙が南西へ流れていた。風上の北殿側から撮影を始めた。この時、正殿は既に焼け落ちていた。

 近年のドローンの性能向上には目を見張るものがある。使用した機体も姿勢制御が安定していて、低速シャッターでも撮れることを、これまでの経験から知っていた。絞りを開けすぎず、ISO感度も上げすぎずに撮ることを意識した。

 数分間の飛行後、機体を戻すとすぐに警察官から職務質問を受けた。国土交通省大阪航空局からの、夜間や人口集中地区での飛行に係る許可・承認書を見せた。気を取り直して再度飛ばし、6時前、火勢が少しだけ弱まったところを写したコマが、翌11月1日付朝刊の1面に掲載された。

 ドローン空撮では、低高度から迫力ある構図が撮影できる。この「鳥の目」を「読者の目」「市民の目」として、これからも報道写真の現場で活用したい。

■「押せば写る」の心意気で

田嶋正雄記者(48)

 昨年10月31日午前4時半、那覇市首里当蔵町の交差点に着くと、真っ赤に燃え上がる首里城正殿が見えた。とても現実とは思えなかった。多くの住民が寝間着姿のまま見上げていた。

 数枚の写真を撮影し、そのうちの1枚を急いで速報用に送信した。デジタル部員へのメール送信の作業中「バチバチバチ」「ゴゴゴー」と轟(ごう)音(おん)が響き、炎を噴き上げて正殿の梁(はり)が焼け落ちた。慌ててカメラを構え、さらに数枚を撮った。人々の間から「ああー」と悲嘆の声が聞こえた。

 朝焼けの守礼門前では首里高校の女子生徒たちが泣いていた。「当たり前に身近にあると思っていたものが無くなってしまった」と言葉を詰まらせるのを聞き、幅広い世代が喪失感を抱いていることを痛感した。人々の思いを伝えたくてシャッターを押した。

 あの日、自分があの現場にいて撮影したのは、たまたまでしかない。ただ「たまたま現場に居合わせる」ために準備と工夫が必要なことは、数々の失敗の中で学んできた。自分の中では撮影に成功した記憶よりも「撮り逃がした瞬間」への後悔の方が強い。

 新聞写真は時代の記録だ。沖縄タイムス写真部の先輩たちは戦後の沖縄社会の歩みを記録し続けてきた。今回の受賞は、これまで地道な仕事を積み重ねてきた先達や同僚の代表で受けるのだと思っている。

 23年前の入社当時、写真の撮り方を尋ねても、部長は「押せば写る」としか教えてくれなかった。「押さなきゃ写らんさーね」の口癖は「現場に行って、とにかく撮れ」の格言だったのだと今、かみしめている。(現社会部デスク)

■再建への思い 実結ぶ

与那嶺一枝編集局長

 「首里城が燃えているという地域の放送が聞こえる」と、同僚からの電話でたたき起こされたのは午前4時すぎだった。「まさか」と思いつつ、自宅のベランダから首里城方向に目を向けると煙が上がっている。十分に事態がのみ込めないまま、とりあえずテレビをつけたらNHKが放送中。今度は青くなった。

 火災が起きたとき、沖縄タイムス編集局は初動で大きく出遅れた。

 その遅れをカバーしたのが、豊富なドローン撮影の経験に裏打ちされた金城健太記者の確かな技術であり、機材一式を詰め込んだカメラバッグを常日頃から玄関に置いて即応態勢を取っている田嶋正雄記者のプロ意識だ。

 彼ら写真部記者は、経過する時間に追われながら焼失の記録を撮り切った。県民と同様に驚愕(きょうがく)と悲しみ、再建への熱い思いを一枚一枚に込めたことが今回の受賞につながった。

[授賞理由]

 沖縄タイムス社は、沖縄の象徴である首里城が焼け落ちる決定的な瞬間と落胆する県民の表情を写真に捉え、2019年11月1日付紙面で報じた。

 未明に発生した火災の中、ドローンを素早く飛ばし、限られた飛行時間で焼け落ちる建物の輪郭や被害の全貌を収めたカメラマンの技量と判断力は卓越しており、報道写真の力をいかんなく発揮した。一面と最終面にわたり見開き展開した紙面は迫力があり、県民にとっての衝撃的な事実をストレートに伝えた。

 新しい技術を使いながら決定的な瞬間を収めた写真はニュース性が高く、歴史に残る写真報道として高く評価され、新聞協会賞に値する。

[新聞協会賞 過去3回受賞]

◆1964年度 「みどり丸遭難事故」の報道記事と報道写真(表彰)

 63年8月17日、泊港を出た久米島定期貨客船「みどり丸」が通称チービシの北西約10キロで横波を受け沈没。取材班はチャーターした釣り船で現場に向かい、多くの写真を撮るとともに、遭難している人たちの救助活動も行った。

◆1996年度 総集「沖縄・米軍基地問題」(編集部門)

 米兵の暴行事件を契機として日米地位協定の見直し、大田昌秀県知事による米軍用地強制使用手続きの代行拒否、村山富市前首相による職務執行の命令訴訟、沖縄米軍の普天間飛行場返還合意と、劇的な展開を見せた基地問題を多角的、徹底的に検証した。

◆1999年度 新聞制作システムOCEANの開発導入(技術部門)

 記事や写真などの素材を簡便な操作で電子編集できる簡易組み版システムを完成、組み版工程の合理化を実現した。

[夜間空撮について]

 本紙は火災発生時に小型無人機ドローンを飛行させ、写真撮影を行いました。これは金城健太記者が持つ国交省大阪航空局からの「許可・承認書」に基づきます。

 金城記者が許可・承認書を得たのは、旧審査要領によるもので、「人口集中地区」での「夜間飛行」も認められていました。

 火災当時、首里城上空を飛行させたことは法的に問題はないとの見解を大阪航空局保安部運用課からも得ています。

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