[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1240)

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 みなさんはCKDという言葉を耳にされたことがあるかと思います。慢性腎臓病の略語で20年ほど前から使用されてきました。CKDは進行すると腎代替療法(腎臓の働きに取って代わる治療法で、血液透析、腹膜透析、腎移植などがあります)を行わない限り、生命に危険が及びます。また、脳卒中や心血管病の合併率が高いこともわかっています。そこでCKD進行予防対策として県内でもいろいろな取り組みが行われています。那覇地区のCKD48(現CKD78)や中部地区のちゅらまーみプロジェクト、うらそえ腎腎プロジェクトなど、かかりつけ医と私ども腎臓専門医との連携システムが構築されております。

 さて、その治療ですが残念ながら進行を完全に止める確実な方法はありません。腎臓専門医は薬・食事制限・生活改善指導など考えられる手段を駆使して、進行のスピードを遅らせようとします。しかしそのことに主眼を置くあまりに、患者さんの価値観、生活環境や嗜好(しこう)をなおざりにして治療を押し付けてしまい、その結果、治療を中断されてしまうことや、紹介を打診されても希望されないこともあるようです。またCKDが悪化してもうすぐ腎代替療法が必要といわれたときに、「自分自身の治療態度が悪かった」など患者さん自身が罪悪感・敗北感を持つなど、ネガティブな印象を誘導してしまうこともあります。腎代替療法に治療のステージが変わっても、それは敗北ではありません。そこから新たな治療形態が始まるのです。

 腎臓専門医を受診していただく意義は、CKD進行を食い止めることのみではありません。病気に対する知識、治療の選択肢を提示し、患者さんの背景をくみ取って、最も納得できる最善の治療法を一緒に探して実践していく。その中で腎代替療法の回避が唯一の正解ではなく、なかには高齢の患者さんなど、投薬や食事制限を控えめにして腎代替療法を選択せずに充実した終末人生を共に考えていくこともあるかと考えます。そのような目的でも紹介を打診されたら腎臓専門医の受診をお勧めします。(比嘉啓・首里城下町クリニック第二=那覇市