紛争地帯をはじめ厳しい環境にある世界各地で地道に積み重ねてきた活動が、多くの人々の命をつなぎ、夢と希望をはぐくんだ。

 今年のノーベル平和賞に、飢えのない世界を目指し食料支援を続ける国連世界食糧計画(WFP)が選ばれた。

 長年にわたる飢餓との闘いと、飢えが戦争や紛争の武器として利用されることを防いだ努力などが評価された。

 食を通じた平和貢献に携わった全ての人々に拍手を送りたい。

 ローマに本部を置くWFPは、国連機関として1961年に設立された。

 世界の約11人に1人が満足な食事が取れていないといわれる中、昨年は内戦や干ばつなどの被害に苦しむ約80カ国の約1億人に食料を届けた。

 一時、減少傾向にあった飢餓人口だが、2016年以降再び増加に転じている。世界各地で相次ぐ武力紛争と、地球温暖化による気候変動の影響を大きく受けているのだ。

 紛争地域の人々が栄養不足に陥る可能性は、紛争のない地域の3倍ともいわれている。

 地球温暖化は日本を含む先進国が過去に大量排出してきた二酸化炭素(CO2)などによって引き起こされている。

 今回の平和賞授与は「世界で最も古くから続く紛争原因」に目を向けさせ、平和と飢餓撲滅が車の両輪だということを改めて思い起こさせてくれた。

 飢餓の問題は決して対岸の火事ではない、との警鐘も心に留めたい。

■    ■

 ノーベル賞委員会は新型コロナウイルスの有効なワクチンが開発されるまで、「食料が世界の混乱を収める最善のワクチンだ」と強調している。

 新型コロナが招いた危機により、飢餓に苦しむ人々が倍増する恐れがあると推測されているからだ。

 国をまたいだ支援が難しく、物の動きが止まる中、食料不安の最前線に立つWFP職員は自前の飛行機や船、トラックをフルに活用し物資を届け続けている。

 感染リスクやテロの脅威と隣り合わせの活動にも頭が下がる。

 さらにWFPが力を入れる学校給食支援では、給食に代わり持ち帰りの食料や食料引換券の配布を進めている。感染症防止対策で休校措置がとられても給食を届ける取り組みは、子どもの命や成長、将来にとって大きな意味を持つ。

■    ■

 世界では6億9千万人に上る人たちが、日々十分な食事が取れず、空腹を抱えたまま眠りについている。

 国連は持続可能な開発目標(SDGs)の柱の一つに

30年までの「飢餓撲滅」を掲げる。飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保を図り、持続可能な農業を推進するという目標だ。

 グローバルな危機に立ち向かうには、自国第一主義に陥らず、国際的な連携と多国間の協力が重要である。

 先進国の積極的な関与で、「食の安全保障」実現の機運を高めたい。