非正規労働者の待遇改善を図ろうとする社会の流れに反する判決だ。

 最高裁は13日、非正規労働者と正社員の待遇格差を訴え、ボーナス(賞与)や退職金の支払いを求めた2件の訴訟で「不合理な格差とまでは言えない」として、いずれも原告の訴えを退けた。

 正社員の6割のボーナス、正社員の4分の1の退職金を支払うべきだとした高裁判決を見直すものだ。

 政府が「同一労働同一賃金」を進める中、非正規労働者に冷たい、後退した内容である。

 ボーナスについて最高裁は、労務対価の後払いや功労報償の趣旨があり、正職員としての職務を遂行できる人材を確保し、定着を図る目的で支給していると指摘。アルバイトは業務が軽易で配置転換もなく、賞与を支給しないことは「不合理な格差」に当たらないと結論付けた。

 退職金については、労務対価の後払いや継続的な勤務に対する功労報償など複合的な性質があると指摘。職務内容に違いがあり、正社員には配置転換の可能性もあったとして、待遇差の不合理性を認めなかった。

 最高裁はいずれの判決も、雇用環境次第では、格差が不合理と認められる場合もあり得るとし、個別に判断したとする。

 だが、判決は減額でもなく、ボーナスや退職金の支払いを一切認めていない。結果的に、経営者側の裁量を広く認めた形だ。

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 非正規労働者は、働く人のおよそ4割に当たる2070万人に上る。日本経済を支える大きな力だ。

 一方、待遇はといえば、平均賃金は正規の3分の2ほど。平均月収で正社員と10万円以上の開きがある。

 さらに新型コロナウイルスの感染拡大による経済の悪化で、「雇用の調整弁」として扱われ、解雇や雇い止めが増えている。

 労働政策研究・研修機構が非正規労働者に行った調査では、納得できない制度や待遇に賞与(37%)、定期的な昇給(26・6%)、退職金(23・3%)が挙がった。

 退職金の支払いを求めた元契約社員の疋田節子さん(70)は駅の売店で10年7カ月働いた。寒風に震える日も、ホーム上で過ごし鼻の中が真っ黒になる日もあった。「(正社員との)違いは一体何なのだ。非正規だからって、使い捨てにはされたくない」。怒りは非正規を代弁するものだ。

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 政府が示す「同一労働同一賃金ガイドライン」は、ボーナスに関して「同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない」とし、線引きがあいまいだ。退職金に関しては記述もない。

 非正規労働者の待遇改善を求める最高裁判決は15日にも3件予定されており、不満は高まっている。

 非正規労働者の待遇を全体的に底上げして、安心して働ける環境をつくることこそ、今、必要なことだ。

 政府は司法判断とは別に、法整備も含め「同一労働同一賃金」の道筋を示すべきだ。