伝統芸能公演「いのちの道~魂の舞台~」が18日午後5時から那覇市のタイムスホールで開かれます。人間国宝の城間德太郎さんや国の重要無形文化財保持者、島袋光晴さんら琉球古典芸能の第一人者が集い、至高の芸を披露して、コロナ禍で活動停滞を余儀なくされる芸能の世界に光をともします。開催の意義や見どころ、演目に込めた思いなど出演者ら5人に話を聞き、古典芸能の魅力に迫ります。(聞き手=学芸部・西里大輝)

 

■古典芸能を生きる力に

勝連繁雄(80)=琉球古典音楽野村流保存会会長、沖縄芸能協会会長 

「古典芸能で生きる力をつかみ取ってほしい」と語る勝連繁雄さん=9月

―コロナ禍で開催する意義とは


 新型コロナウイルスで命が脅かされている今だからこそ、人々の心に「芸能」が必要なんです。命が脅かされる経験を沖縄は「沖縄戦」で経験しました。多くの命が犠牲となり、家族もばらばらになった。その時、県民の生きる力となったのが「芸能」です。
 戦後すぐ、うるま市石川にあった収容所で、組踊「花売の縁」が上演されました。行方の分からない森川の子を妻の乙樽と子の鶴松が捜し、再会するという家族の絆を描いた物語です。「花売の縁」が戦争で傷つき、打ちひしがれた沖縄の人たちの心を勇気付け、再会への希望を与えてくれました。
 このように、沖縄は常に芸能が社会を救済する役目を果たしてきたのです。

―タイトルは勝連会長が考案している。なぜこのタイトルとなったのか

 お笑いタレントの志村けんさんや女優の岡江久美子さんが新型コロナで亡くなった時、遺族は最期の見送りができないまま、遺骨となって帰ってきました。その時、私の中のイメージとして浮かんだのは「命」でした。
 新型コロナは人類の価値観や考え方、文明の在り方を全部ひっくり返してしまいました。沖縄芸能界も活動停止を余儀なくされ、芸能人も、舞台を見られなくなった一般の方々も、無力感に駆られました。私もこれまでの人生で、これほどのむなしさを感じたことはありませんでした。ただそのことが、改めて命の尊さや、人生をどう生きるべきかを考えさせてもくれました。
 私は歌三線奏者ですが、詩も書きます。「命」は肉体的なものと、本質的なものがあり、本質的なものが「魂」です。コロナ禍でもし魂が滅んだとなると、まさに絶望にしかならない。だからこそ、何かメッセージを発する必要があると感じました。魂が生き続けるためにも、ただ漫然と待つのではなく、自らその道を掘り起こし、コロナ禍の状況下で発信したいとの思いが、タイトルへとつながりました。

 

■十八番芸 体得した人が出演

―本公演の見どころは

 たくさんの出演者を出すことは今の状況では不可能ですので、この人以外には絶対演じられないという十八番芸を体得した人に出演してもらおうとなりました。舞踊では島袋光晴さん。「波平大主」でこの人の右に出る人はいません。「稲まづん」を踊る宮城幸子さんの真境名佳子の一番弟子で、女古典舞踊の第一人者です。比嘉聰さんは人間国宝。太鼓の芸はただたたけばいいだけではなく、昔から厄をはらうという親和性もあります。古典音楽独唱の金城タケ子さん。女性の古典音楽奏者の草分け的存在です。このほか、人間国宝の城間德太郎さん、女性舞踊家の佐藤太圭子さんとそうそうたる方々が出演します。

旧タイムスホールで演奏する勝連繁雄さん(右)=1986年10月



―自身も古典音楽独唱で「本調子仲風節」を歌う。なぜこの曲を選んだのか

 この曲の特徴は言葉と音楽が溶け合い、旋律がとてもまろやかで、月を眺め、そこに吸い込まれて、そのまま眠ってしまいそうなそういう曲想を持っています。「語いたや 語いたや」という歌詞に、人間の理想的な姿が感じられ、生きること、命の尊さを考えるときに、自然の摂理と人間がどうあるべきかをこの曲は語っています。コロナ禍での今回の舞台に合っていると思いますし、名曲で私の一番好きな曲でもあります。

月あかりの演出で「本調子仲風節」を歌う勝連繁雄さん

―本公演に期待することは

 古典は地味ですが、こういう時だからこそ、じっくり見て、聴いてほしいし、生きる活力を古典芸能からつかみ取ってほしいと思います。そして、この大変な時期にやる意味は何だろうかと、演じる人も、見る人も考えてもらえるとありがたいです。
 
 公演はオンライン配信アプリ「Zoom(ズーム)」を利用して、当日生配信されます。配信料は2千円。購入はこちらから。

「いのちの道~魂の舞台~」
(1)勝連繁雄
(2)宮城幸子
(3)金城タケ子
(4)比嘉聰
(5)新垣俊道