芸道70年の至高の舞いに、会場の空気が張り詰める。18日に開かれる「いのちの道~魂の舞台~」(主催・沖縄タイムス社)の稽古。戦後の沖縄で琉球舞踊隆盛の礎を築いた真踊流創始者・真境名佳子さん(1919~2005年)の一番弟子で、女性舞踊家の宮城幸子さんは、師の振り付けた「稲まづん」を流麗に踊り、存在感を放った。(学芸部・西里大輝)

■師の技 体現し継承へ

(2)宮城幸子(86)=真踊流相談役、真踊流佳幸の会会主

 沖縄県名護市出身。子どもの頃に見た村芝居の舞踊に憧れを抱く。中学校の卒業式で舞踊「松竹梅」の梅を組まれ、その稽古をきっかけに舞踊の道へと進んでいった。
 1951年、18歳で入門。家族同然の付き合いをしていた方が、「松竹梅」の踊りに才能を見いだし、「踊るなら那覇に行った方がいい」と勧められ、紹介された。

ベスト10公演で「かせかけ」を踊る宮城幸子さん

 真境名さんの教えは厳しかったという。柱の前に立ち、姿勢作り。何度も「歩み」の重要性を説いた。厳しい指導と稽古は、54年に沖縄タイムス社が初めて催した「新人芸能祭」(通称・ベスト10)の審査で宮城さんを合格へと導く。10人を選ぶ審査に45人が挑んだ。「緊張で震えた。よく最後まで踊れたと思う」と当時の心境を思い返す。

真境名佳子さん(右から2人目)と群舞する宮城幸子さん(同3人目)

 その時の審査では「髪結い」のお題も突然出されたという。宮城さんらは舞台に化粧箱を持ってきて、自分で髪を結った。その次は座らされて質問。宮城さんは「かせかけ」を踊ったからか、「その歌詞を言ってごらん」という質問だったと、懐かしむ。

 受賞は宮城さんにとって転機になった。文化庁芸術祭に参加する芸能団の一員にも選ばれ、真境名さん以外の大御所とけいこする機会にも恵まれた。「師匠の舞台や、眞境名由康先生、島袋光裕先生らそうそうたる先生方の素晴らしい踊りを袖で見て、先生方のように踊りたい、近づきたいという思いは強くなった」

 本公演で踊る「稲まづん」は五穀豊穣(ほうじょう)や世果報(ゆがふ)、無病息災を願う荘厳な踊りで、師との絆を感じる演目でもある。「先生は口酸っぱく、舞踊は『歩みで始まり、歩みで終わる』とおっしゃり、それを体得しなさいと言われた。その先生の稲穂の実りを体現し途絶えることなく、次世代につなげていきたい」と話す。

 新型コロナウイルスの影響で当たり前にあった舞台がなくなった。舞台に立てない日々が続き、憂うこともあったというが、これまで一緒に切磋琢磨(せっさたくま)してきた城間德太郎さんや、島袋光晴さんらとの舞台に、どこかうれしそうだった。

旧タイムスホールで「稲まづん」を踊る宮城幸子さん

 「素晴らしい、先達の先生方の技を次の世代に伝えていくのが私たちの使命だ」との思いが宮城さんの心を奮い立たす。「細かい技を心でもって伝え、真踊流の神髄を次の世代につないでいきたい」。穏やかな宮城さんの表情に強い信念が浮かんでみ見えた。

 これまで積み上げてきた芸道と人生の歩みが、必ずや奥深い踊りとなり、本公演でも体現されて、画面越しにも感動を与えるだろう。

 公演はオンライン配信アプリ「Zoom(ズーム)」を利用して、当日生配信されます。配信料は2千円。購入はこちらから。

「いのちの道~魂の舞台~」
(1)勝連繁雄
(2)宮城幸子
(3)金城タケ子
(4)比嘉聰
(5)新垣俊道