中国広東省深圳市で経済特区成立40年を祝う記念式典が14日行われた。習近平指導部は深圳をさらに発展させ、香港と中国本土の経済を一体化させるための足場にすることを狙う。共産党の支配を強化しながら成長を図り、圧倒的な経済規模を背景に経済だけでなく政治的にも香港をのみ込む勢いだ。香港国家安全維持法(国安法)の施行で民主化が後退する香港は一層危機感を募らせる。

 中国広東省深圳の「媽湾港」=9月(共同)

▽進む大湾区構想

 「第5世代(5G)移動通信システムと自主開発のソフトを組み合わせて無人化を実現した」。9月下旬、深圳の前海地区で8月に稼働し始めた「媽湾港」を訪れると、担当者が胸を張った。遠隔操作で貨物船から次々にコンテナが降ろされている。

 中国政府は広東と香港、マカオの経済を一体化させる「ビッグベイエリア(大湾区)構想」を推進。前海地区は香港との経済連携を強めるため、急速に開発が進む。

 同地区は香港企業に特別に土地を提供しているほか、香港の弁護士や会計士の資格を持つ人の業務を許可するなど、各種の優遇措置も導入した。

▽「発展史の奇跡」

 中国政府によると深圳の経済規模は40年で1500倍超に膨張。既に域内総生産(GDP)で香港を上回った。習国家主席は14日の演説で「世界の発展史上の奇跡だ」と誇った。

 市内には華為技術(ファーウェイ)や、通信アプリの微信(ウィーチャット)を運営する騰訊控股(テンセント)など中国の代表的な企業がある。街を走るタクシーは電気自動車。いまや北京、上海と並ぶ先進都市だ。

 政府は11日、深圳の新たな発展プランを公表。2025年までにエネルギーや交通、教育、金融などの分野で本土の他都市に先駆けて外資への市場開放を進める。「一国二制度」の下で資本主義を認めている香港やマカオと、経済の融合を加速させる方針だ。

▽統制強化を重視

 だが中国が深圳に資本主義を導入するわけではない。習指導部は昨年、35年に深圳を「社会主義現代化強国の模範的な都市」に成長させる目標を掲げた。経済政策の立案に関わる党関係者は「西側の資本主義とは違う発展モデルがある」と話す。重視するのは党による統制強化だ。

 習氏は演説で、党・政府と企業の関係を密接にする必要性に言及。対外開放で外国との関係が深まることに伴う「リスク」への対処も強調した。先端技術を用いた「都市管理の革新」も呼び掛けており、市民への監視が強まるのは必至だ。

 統制強化を通じて深圳を成長させ、香港・マカオとの一体化を目指す習指導部。経済だけでなく政治的な自由を尊重する香港の人々の懸念はますます強まる。香港紙は「深圳が香港を食う」と危機感をあらわにした。(深圳共同=早川真)