沖縄の周辺海域にも多く生息するミドリイシ属サンゴが、雲を形成して日陰を作ることで今よりも暑い地球環境を生き抜いてきた可能性があることが分かった。東京大学や恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)などの研究者らで構成する研究チームがゲノムを解読して明らかにした。サンゴ礁が今後の地球温暖化などの気候変動や環境の変化に適応できるかの解明につなげたいとしている。研究結果は15日、英科学誌に掲載された。

(資料写真)白化したミドリイシの群落(吉田稔氏提供)

雲を作ることで、過去の温暖な環境に適応か?

(資料写真)白化したミドリイシの群落(吉田稔氏提供) 雲を作ることで、過去の温暖な環境に適応か?

 ミドリイシ属サンゴの祖先は恐竜がいた白亜紀から存在し、海水温の上昇による白化の影響を受けやすい。同サンゴは造礁サンゴの中で最も繁栄し、他のサンゴより成長が早い。サンゴ礁全体の成長や島の形成、海岸の保護などに役立つとされ、100万種以上の海洋生物のすみかにもなっている。

 研究チームは、沖縄周辺に生息するミドリイシ属15種を含む18種のゲノムを解読。ミドリイシ属だけに雲の形成に関係するDMSPリアーゼという酵素を作り出す遺伝子が存在し、この遺伝子がこれまでの同サンゴの進化の過程で最も数が増えていたことが明らかになった。

 ミドリイシ属サンゴの持つDMSPリアーゼは、海中でDMSPという分子を分解し、硫化ジメチル(DMS)という化合物を生成する。それが大気中に放出されると、水蒸気を集めて水滴や氷の粒となり雲の形成を助ける働きをする。

 研究チームはミドリイシ属サンゴが、形成した雲で日光を遮断し、現在よりも温暖な時代を生き延びた可能性を指摘している。

 研究を主導したのは沖縄出身で元OIST研究員、現東京大学大気海洋研究所の新里宙也准教授(42)。「雲を作る仕組みが備わっていることに驚いたが、本当に雲を作ってきたのかはまだ証明できない。ただ現在より過酷な地球環境を生き延びたのは事実で、謎を解き明かしたい」と今後の研究に意欲を示した。

 OISTの佐藤矩行教授は「今回明らかになった情報は、今後のサンゴの生物学的研究の基礎になるはず」と強調した。