歌三線の女性実演家が少ない時代から一線に立ち続け、女性として初の独演会に挑んだ女性古典音楽奏者の草分け、金城タケ子さん(80)。師の安富祖竹久さん(1915~90年)と、自身の芸道を育んだタイムスホールへの感謝と恩返しで18日の舞台に立つ。
(学芸部・西里大輝)

(3)金城タケ子(80)=琉球古典音楽野村流保存会相談役

■歌の味わい表現する

 国頭村桃原出身。自然があふれ、芸能が盛んな地域に育つ。幼い頃から歌は好きで、小学生の時、集落の子をお守りしていて、自身が創作した子守歌を歌って聴かせたりした。「母の話では隣のおばあちゃんたちが私の子守歌を聴き、聴かせてほしいと言ってきたそうよ」。金城さんの母親も地域の村芝居で歌ったりと、芸能が好きで、歌三線を始めたのも母親を喜ばせるためだったという。「私が音楽を好きなのは母の気質を継いだのかも」と懐かしむ。

感謝と恩返しで舞台に上がりたいと語る金城タケ子さん=2020年9月


 17歳で那覇に出てきて、仕事や踊り子のアルバイトをしていた。本格的に三線を習いだしたのもこの頃で、スタートは民謡。しかし、好きだったのは古典音楽で、古典を学びたいと強く望んでいた。

 そんな折、元新聞記者で沖縄新進芸能家協会の初代会長を務めた故大山一雄さんから、後に「戦後の名人」と称される安富祖さんを紹介される。その時聴いた安富祖さんの歌声に心を奪われ、「先生の歌を習いたい」と入門。「まだその頃、先生は教師免許を持っていなかった。『まっちょれよー』と言って、その年に免許を取得し、正式に先生の一番弟子となった」

前列右から4人目が安富祖竹久さん、同5人目が金城タケ子さん


 安富祖さんとの出会いは、金城さんの音楽家人生の転機となる。師事して翌年の1964年、沖縄タイムス芸術祭の新人賞を獲得。67年には同芸術祭の最高賞を受賞し、教師免許も取得した。その頃金城さんは琉舞も学んでいたが、古典音楽一本に絞り、芸道にまい進する。また、男社会だった三線の世界で奮闘し、持ち前の愛嬌(あいきょう)と古典音楽への情熱で道を切り開く。今では女性実演家の数も半分近くを占めるまで広がった。「古典音楽は男性のために作られた歌が多いが、女性が歌っても素晴らしい歌がいっぱいある。先人が苦しい思いをして創り上げた音楽をみんなで共有し、継承していくべきだと思っている」と優しいまなざしを注ぐ。

 本公演で歌う「仲村渠節」は師の安富祖さんが好きだった思い入れのある歌だ。「先生の歌う仲村渠節がとても好きで、いつか独唱したいと希望していた」。安富祖さんの生前に独唱することはかなわなかったが、金城さんは自身の第1回の独演会で、この歌を歌った。

第1回独演会で演奏する金城タケ子さん

 今回はオンラインで舞台の様子を生配信される。「画面越しにでも、表現や思いがにじみ出るはずだし、伝えることができると思う。自分の歌の思い、歌の旋律、仲村渠節という歌の世界をうまく表現し、先生の歌の味わいを少しでも出せたらうれしい」と朗らかな笑顔を浮かべる。

 コロナ禍でリスクのある中での舞台に金城さんは「芸能関係者のために機会を与えてくれた」と感謝。「私はタイムスホールで育てられた。その恩恵は絶対に忘れてはいけないと思っている。恩返しのつもりで、舞台を成功させたい」と意気込んだ。


 公演はオンライン配信アプリ「Zoom(ズーム)」を利用して、当日生配信されます。配信料は2千円。購入はこちらから。

「いのちの道~魂の舞台~」
(1)勝連繁雄
(2)宮城幸子
(3)金城タケ子
(4)比嘉聰
(5)新垣俊道