人間国宝・城間德太郎ら琉球古典芸能の第一人者を集めた「「いのちの道~魂の舞台~」で、琉球古典音楽野村流保存会師範の新垣俊道さん(41)が地謡を務めます。中堅・若手実演家の代表格での一人で、沖縄伝統芸能の継承の担い手でもある新垣さんに、オンラインでの配信や伝統芸能の将来展望などを聞きました。(聞き手=学芸部・西里大輝)

■継承の決意と感謝で

(5)新垣俊道(41)=琉球古典音楽野村流保存会師範

「地謡を務めることができ光栄」と話す新垣俊道さん=2020年10月

ー本公演で地謡(歌三線)を務める
 今回はそうそうたる先生方が出演します。新型コロナでその先生方との交流もなくなっていましたし、これだけのメンバーが集まる舞台は、もしかして次はないかもしれません。その舞台で地謡を務めることをとても光栄に感じています。

ーコロナ禍で舞台を開く
 今回は高齢の先生も多く、そのリスクもあるので、心配はあります。しかし、それでも引き受けたというのは実演家としての魂が、歌って、踊って、何かを伝えたいという気持ちに駆られてるのだと思います。皆さん舞台人で、ずっと舞台をしてきた方々です。いきなり芸能がなくなるつらさもあったと思います。その意味では、今回の公演にかける先生方の気概も大きいと思います。

「第3回歌鎖」公演で演奏する新垣俊道さん(後列右)=2017年7月

ー今回はオンラインでの生配信を試みる
 映像による発信はコロナ収束後も必要性があるでしょうし、今後は舞台との併用になっていくと感じています。ただ、先行している配信動画を見ると、かなりの作り込みがされています。伝統芸能関係者はデジタル化という点では苦手意識があるので、その意識を変えていかないといけないと思います。
 これだけ大御所の先生方の芸は生の舞台でもなかなか見ることはできません。コロナ禍とはいえ、それがオンラインで見られるというのも、とても貴重で幸せなことだと思います。コロナで見に行きたくても行けないという人もいるでしょうし、県外や海外の人も見ることができます。生の舞台を見られない人からするとこんなにうれしいことはないはずです。伝統芸能が好きな人たちは、今回の生配信に大喜びしていると思います。
 一方で、実演家の育成という点ではオンライン配信というものに難しさを感じます。私は現在、三線組合とタイアップしてオンライン教室を開いています。県外の人がほとんどでカナダの方もいます。節回しや弾き方は、ある程度指導できます。県立芸大も対面とオンラインの併用になっています。ただし、声の大きさ、三線を弾く強さなどは分かりませんし、生の舞台の空気感や緊張感は体験できません。舞台の観客の反応が実演家の力を高めてくれます。その機会をどうつくるかは課題です。また、オンラインだと、人間関係が希薄になることの怖さもあります。心構えも養えません。配信による鑑賞機会の提供も必要ですが、実演家を育てる上ではどうしても生の舞台が必要です。観客に見られて感じること、学ぶものがあります。

初の独演会で古典音楽を独唱する新垣俊道さん=2016年8月 初の独演会で古典音楽を独唱する新垣俊道さん=2016年8月

ー中堅・若手が描く、伝統芸能の未来は
 公演は少しずつ増えますが、実情は国立劇場おきなわなどの公的機関や助成金を受けての舞台になっています。しかし、それもいつまでできるか分かりません。自分たちで公演を行うにしても、今は採算が取れず、開催もままならない状態です。
 今は給付金を受けたり、アルバイトをして何とか乗り越えようとしていますが、この窮状に、私たちより下の世代の実演家が、この道でやっていくのは難しいと感じ、やめたり若い人のやり手がいなくなったりしないか。沖縄伝統芸能の担い手がいなくなってしまわないかという懸念があります。
 でも、動かないと止まってしまいます。これまで、個人のマンパワーに頼っていたところもあるので、団体・法人でいろんな活動や取り組みにあたる必要があると感じています。今は国立劇場におんぶに抱っこ状態ですが、そうじゃなく、実演家がどうやって芸能だけで安定した生計を立てれるかを考えながら活動していかないといけないと思います。実演家の活動を見いだし、広げ、生計が立てられる世界を構築しないといけない。そうしないと、継承の担い手がいなくなってしまいます。
 それと同時に趣味や生きがいとして道場での稽古を楽しみにしている人もいますので、そこをつぶさず、伝統芸能に親しむ機会、触れる機会の裾野を広げることが求められると思います。沖縄の老若男女すべてに伝統芸能を体感してもらい、鑑賞してもらう。そこから、年を重ねた時に、やってみたいという人たちが出てくるはずです。そのことが地元愛や沖縄の産業に生かされると感じています。

ー公演ではどのように演奏したいか
 コロナ禍でも会場で、またはオンラインで見てくれる方々いらっしゃいます。今回のことだけではなく、これまでのことに感謝をし、今後も琉球古典芸能を続けていく、継承していくという決意を持ちながら地謡を務めたいと思います。

 公演はオンライン配信アプリ「Zoom(ズーム)」を利用して、当日生配信されます。配信料は2千円。購入はこちらから。

「いのちの道~魂の舞台~」
(1)勝連繁雄
(2)宮城幸子
(3)金城タケ子
(4)比嘉聰
(5)新垣俊道