古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」

[古田拓也ITmedia]

 コロナ禍を機に民間企業でトレンドワード化した「DX」(デジタルトランスフォーメーション)。旧来の慣行からデジタルへ移行する動きは、政府にも波及し始めている。

 河野太郎規制改革担当大臣と平井卓也デジタル改革担当大臣の両タッグが、しきりに取りざたされている菅義偉政権。河野氏は就任後まもなく「ハンコの廃止」や「FAXの廃止」というキャッチーなテーマを例にとって、政府のデジタル化を推進する姿勢を国民にアピールした。

 これはアピールにとどまらず、早速さまざまな行政分野でデジタル化の動きがみられている。10月12日には、不動産売買の重要事項説明をオンラインでも認めるようにする方針を国交省が明らかにした。14日には国内で1600種類程度存在するとされる金融機関の「書面限定」手続きを、2021年度には完全デジタル化する方針が金融庁を中心に動き始めていることが一部報道で明らかとなった。

 このような政府のDXにはどのような背景があるのだろうか。そして、政府のDXで期待できる経済効果と合わせて検討していきたい。

ハンコ廃止というキャッチーな見せ方で、政府はDX化を進める(写真提供:ゲッティイメージズ)

アベノミクスでも生産性で取り残された日本

 2020年には、史上初めて日本人の人口減少幅が年間50万人の大台を超えた。65歳以上の人口は3617万人と過去最高を更新。労働力人口が減少しているなかで、新型コロナの感染リスクを抑制し、経済成長を遂げるには労働生産性の向上は不可欠な要素となるだろう。

 安倍政権発足直後の13年に発表された「日本再興戦略」の重要目標の中には、世界銀行が公表する「ビジネス環境ランキング」で先進国中3位以内に入るという目標が掲げられていた。当時、日本はOECD加盟国の中で15位だった。しかし、最新値は18位と落ち込んでおり、この目標については結果が伴わなかったといえそうだ。

 そもそも世界銀行のビジネス環境ランキングは、最も進んでいる国からどれだけ後退しているかをスコアリングして序列づけるものだ。ランキングの下落が意味することは、国内のビジネス環境の改善について有効な改善策が取れないまま、改善していく他国にとり残されているという現状が見え隠れする。

 海外と比較して時間を要している例が「不動産登記」だ。最先進国が数日で完了するにも関わらず、日本は2週間、相続の場合は関連書類の手続きも合わせて1カ月程度もかかるケースもあるという。買い手売り手の押印手続きが必要であることや、法務局への申請手続きや法務局内での手続きに時間を割かれているのが現状だ。

 その他にも、ビジネス環境上で最先進国と比較して見劣りする「会社設立」などの各種手続きには、やはり多くに「ハンコ」が登場する。河野氏が「ハンコ廃止」を唱える本質は、印鑑そのものを根絶するというよりも、むしろ「手続きの簡略化」という課題を「ハンコ」というキャッチーな用語に置き換えて表明したものであるとみるべきだろう。

 それでは、政府がDXで手続きの簡略化を果たした先に、どれほどの経済効果が期待できるのだろうか