迷った考えた現場からの報告

コロナに翻弄される17歳の涙に言葉が出ず 「#夏を終わらせない」に込めた願い 選手一人一人の物語に焦点

2020年10月20日 13:25

[迷った 考えた 現場からの報告](4)

高校野球の県夏季大会で優勝した八重山。コロナ禍の夏を、全力で戦い抜いた=8月2日、名護市・タピックスタジアム名護

 コロナ禍のさなか、恩納村の海を前に1人の高校球児が泣いていた。臨時休校中の5月19日のこと。翌日には夏の甲子園の開催有無を決める日本高野連の会議があったが、15日には既に中止報道が流れていた。

 聖地・甲子園を「約束の場所」と語る美里工業高エースの與古田美月さんは、気丈に振る舞いながら本音も吐露した。「仕方ないっすよね、悲しいっすよね、行きたかったすよね、本当に…」。新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)される17歳の涙。言葉が出なかった。

 3月24日に東京五輪の1年延期が決まったのを皮切りに、新型コロナはスポーツ界でも猛威を振るった。県内の大会は軒並み中止となり、全国中学校体育大会や全国高校総体、夏の甲子園と小中高生たちが目指してきたひのき舞台が奪われた。

 休校中、校内に入れない中高生が小人数で公園などに集まり、自主練習する姿を何度も見掛けた。全国総体の中止が決まった翌日の4月27日、中部商業高陸上部の小波津優さん(18)の願いは「みんなに会いたい」。仲間と顔を合わせられないことがつらかった。

 スポーツ報道に携わる私たちにできることは一つ、彼ら彼女らが頑張ってきた証しを紙面に残すこと。県高校総体や高校野球の県夏季大会で結果を伝えるだけでなく、より多くの人に寄り添えればと、敗れた選手にもスポットを当てる紙面企画「涙の跡」も始めた。

 亡くなった母に優勝を誓う主将や、甲子園中止のショックを引きずりながら臆病な性格を克服した選手など、取材をすればするほど選手一人一人に物語があった。「特別な夏」と呼ばれようと、最後の夏に懸ける思いは変わらない。

 各大会共通のタイトルカット「#夏は終わらせない」には「集大成の舞台を残したい」との願いを込めた。県が緊急事態宣言を出した翌日の8月1日にあった高校野球準決勝。大会関係者が「『夏は終わらせない』との言葉に励まされたんだよ」と言ってくれた。

 後日談がある。「涙の跡」で紹介した高校球児から先日、専門学校に合格したと連絡が来た。沖縄カトリック3年の大田一輝さん(17)は沖縄尚学との1回戦に登板して敗退。ミーティングで号泣する姿を見て声を掛けると、4月に父を亡くしていた。高校の県大会で、初めての奪三振がうれしかったという。

 大田さんの記事を専門学校の関係者が目にしたそう。「新聞記事を読んでくれたみたいで、そのおかげでもあります」との言葉に、試行錯誤しながら駆け抜けた日々が救われた気がした。コロナ禍の夏を乗り越えた3年生は、きっとどの世代よりも強い心を持っている。紙面が彼ら彼女らの人間性を伝えるきっかけになったなら、これほどうれしいことはない。

(運動部・我喜屋あかね)


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