社説

社説[首相所信表明]負担語らず空虚な演説

2020年10月27日 05:00

 臨時国会が召集され、菅義偉首相が就任後初の所信表明演説を行った。

 菅内閣の発足から既に40日。所信表明がこれほど遅いのは異例だ。安倍前政権時に通常国会が閉会してから実に4カ月余りが経過している。「国会軽視」の姿勢まで継承したということなのか。審議を避けているとの批判は免れない。

 菅首相は演説で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設について、危険性除去のため「工事を着実に進める」と強調した。安倍晋三前首相は1月の施政方針演説で辺野古移設に言及しておらず「復活」した格好だ。

 さらに米軍北部訓練場の過半の返還に触れて「本土復帰後最大の返還となった」と成果を誇示した。一方、演説では語られなかったことがある。

 辺野古新基地の予定海域に軟弱地盤が広がり、改良工事によって工費は当初の約2・7倍に膨らむこと、工期が大幅に延び、順調に進んだとしても普天間返還は2030年代半ば以降にずれ込むことへの言及はなかった。

 北部訓練場の過半返還に伴い、集落を取り囲むようにしてヘリパッドが6カ所新設され、騒音被害が増していることにも触れていない。

 「沖縄の皆さんの心に寄り添いながら取り組む」と菅首相は主張した。これまで何度「寄り添う」という言葉が使われただろうか。普天間の一日も早い危険性の除去と言いながら、あと10年以上待てというのか。あまりに不誠実だ。基地負担の実態や解決策を語らなければ、県民に寄り添う姿勢は見えてこない。

■    ■

 演説では、日本学術会議の会員候補への任命拒否問題にも触れなかった。

 推薦された6人を首相がなぜ任命しなかったのか、納得できる説明はいまだにない。「総合的」「俯(ふ)瞰(かん)的」と繰り返されても意味不明だ。

 学術会議に対し約10億円の国の予算が投じられているとして、政府は行政改革の対象として検証すると言い出している。まったく別の問題であり、論点のすり替えである。

 世論調査でも首相の任命拒否の説明は「不十分だ」との回答が72%に達するなど、国民はこの問題に厳しい目を向けている。

 野党は国会で追及の構えを見せている。菅首相は真(しん)摯(し)に向き合い説明責任を果たすべきだ。官房長官時代にモリカケや桜を見る会などの問題に対して示した強権的な対応は改めてもらいたい。

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 収束が見通せない新型コロナウイルス対策も重要だ。演説では、感染防止と経済再生の両立を図るとし、重症化リスクの高い高齢者らに徹底した検査を行い医療資源を重点化すると明言した。医療現場が混乱しないよう仕組みを早急に整えてほしい。

 菅首相は「『自助・共助・公助』そして『絆』」を掲げるが、公助をどう考え、自助や共助とどう関わりを持つのか。

 コロナによって特に弱い立場にいる人たちが経済的な打撃を受けている。社会保障政策を含めて目指すべき国家像を示すべきだ。

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