菅義偉首相が所信表明演説で、2050年までに国内の温室効果ガス排出を実質ゼロにすると宣言した。

 「やっと」世界の動きに追いついたという印象が否めない。それでも政府が、脱炭素の姿勢を明確にしたことは、産業界にもインパクトを与え、評価できる。

 地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」の下、主要国はすでに取り組みを進めている。

 欧州連合(EU)は昨年には50年までの温室効果ガス実質ゼロの目標を示しており、法制化も合意済みだ。

 世界最大の二酸化炭素排出国である中国も、60年までに実質ゼロを目指すと表明している。

 日本は世界第5位の二酸化炭素排出国で、化石燃料への依存度が高い。脱炭素社会への転換が容易でないことは明らかだ。

 菅首相は省エネを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入して、長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換すると宣言した。だが、具体策は示していない。

 国連のグテレス事務総長は、日本の宣言を評価した上で、目標達成のための具体的な政策措置を提案し、履行するよう呼び掛けた。

 二酸化炭素排出量の多い石炭火力を具体的にどう減らすのか。再生可能エネルギーへの転換、技術革新をどう進めるのか。

 政府は、30年間のロードマップ(行程表)をしっかりと示してほしい。

■    ■

 世界がこぞって脱炭素に取り組むのは、地球温暖化による気候危機が深刻化している現状があるからだ。

 南極での異常な高温、アフリカでの干ばつや大雨、バッタの大量発生など、世界各地で異変が起きている。国内でも台風や豪雨などの自然災害が相次ぐ。

 沖縄でも、サンゴの白化が進むなど、気候危機は身近な問題だ。

 沖縄は本土と送電網がつながっておらず、大規模な水力発電もないため、化石燃料への依存度が高い。特に石炭は沖縄の主要電源で、発電量の6割を占める。

 温室効果ガス削減は自治体レベルでの取り組みも重要で、県には、再生可能エネルギーへの転換に本腰を入れてほしい。

 太陽光や風力など自然の力を使ったエネルギーの利用促進を進め、サトウキビの搾りかす(バガス)を使ったバイオマス燃料など資源の有効活用も積極的に行ってほしい。

■    ■

 遅れを取り戻すには、大胆な政策転換が必要だ。

 政府には相応の予算を投じて、企業や自治体を支援することが求められる。

 国レベル、自治体レベルで取り組むほかに、個人での取り組みも不可欠になる。

 車依存をやめる、必要のない物は買わないなど、二酸化炭素を出さない行動が求められる。

 温室効果ガス排出実質ゼロという大きな目標まで、30年という期間はあっという間に違いない。

 一人一人が、自分事として取り組む機運を高めたい。