新型コロナウイルス感染拡大による影響が、女性たちの肩に重くのしかかっている。国際通貨基金(IMF)などは「この30年間の努力を消してしまうほどに女性の経済的な機会が損なわれる恐れがある」と警告する。「ジェンダー格差」に目を向けた対策を急がなければならない。
総務省が発表した9月の労働力調査によると、パートやアルバイトなど非正規労働者は前年同月比で123万人減り2079万人となった。7カ月連続してのマイナスである。
非正規を対象とした解雇や雇い止めが相次いでおり、「雇用の調整弁」となっている実態が改めて浮かぶ。
減少が目立ったのはテレワークが難しい宿泊業・飲食サービス業などである。もともと女性は男性に比べて非正規で働く人の割合が高く、123万人の約6割を女性が占めていた。
コロナの収束は見通せず、雇用回復には時間がかかるとみられ、影響は長期化しそうだ。
中でも厳しい現実に直面しているのが、勤務先の休廃業や労働時間の短縮などで、少ない収入がさらに減ったという、ひとり親家庭である。
「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の調査で、母子家庭の18・2%が食事回数を減らしていると答えていた。
コロナ禍の負担は、普段、かつかつの生活を余儀なくされている人々により重くのしかかっているのだ。
格差の固定と拡大が懸念される。
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女性たちが抱える困難とも深く関わっているのだろう。
警察庁の統計(暫定値)で7月以降、女性の自殺者が大幅に増加していることが分かっている。
9月だけでも、女性は前年同月比27・7%増の640人。男性は同2・3%増の1188人だった。
「いのち支える自殺対策推進センター」の分析によると、特に同居人がいる女性と無職の女性で多かったという。
外出自粛により逃げ場を失った女性たちがドメスティックバイオレンスの被害に遭ったり、経済上の問題から精神的に追い詰められているのではないか。
新型コロナ特措法の付帯決議には「自殺対策を万全に講ずる」との一文がある。
政府には自治体や民間とも連携し対策を推進してもらいたい。精神的ケアや相談体制の充実など、これまでより踏み込んだ支援を届けるべきだ。
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「女性活躍」を看板政策とした安倍政権で女性の就業率は70%まで上昇したが、その半数以上が不安定な非正規雇用である。目標とした「女性登用30%」は先送りされ、ジェンダー格差も埋まらなかった。
そのいびつで掛け声倒れの女性活躍政策が、コロナ危機で不平等を深める結果を招いたといえる。
低所得のひとり親世帯への特別給付金の継続、女性の雇用を安定させるための就職支援や職業訓練の強化を求めたい。