働く高齢者が増える中、再雇用後の賃金格差の是正を求める重要な判決だ。

 定年退職後、再雇用された自動車学校の元社員2人が、同じ仕事なのに賃金が不当に減らされたと訴えた裁判で、名古屋地裁は「定年時の60%を下回る部分は違法」とし、学校に差額分の支払いを命じた。

 個別企業に対する判決とはいえ、同じような立場にある労働者の待遇改善を促す可能性がある。企業の側も格差是正を迫られそうだ。

 判決によると、2人は教習指導員として2013~14年に60歳を迎え、定年後、有期雇用の嘱託職員として働いた。主任の役職が外れたほかは職場も仕事内容も変わらなかったが、基本給は半分以下まで下がった。

 判決は、業務や責任の程度に違いがないにもかかわらず、若手社員の額すら下回るのは「労働者の生活保障の観点から看過しがたい水準」と指摘する。

 その上で「基本給を定年時の60%」とし、これを下回る基本給や賞与などの減額分は、不合理な格差を禁じる旧労働契約法20条に反すると結論付けた。

 6割という水準は「同一労働同一賃金」からは遠い。非正規の賃金水準が正社員の8割程度と格差の小さい欧州などと比べると、決して十分ではない。

 ただ元社員の1人が話しているように「基本給について認められた点は意義がある」。

 次につなげる一歩にしたい。

■    ■

 非正規で働く人たちが正社員との待遇格差の是正を求めた5件の裁判で、先月、相次いで最高裁判決が言い渡された。

 日本郵便の契約社員らの訴訟では、扶養手当や病気休暇などが認められている。判決後、同社は「必要な制度改正に取り組みたい」とコメントを出した。

 一方、大阪医科大のアルバイト職員だった女性が賞与を、東京メトロの子会社で契約社員として働いていた女性らが退職金を求めた訴訟は、いずれも認められなかった。

 手当や休暇の付与は広がるものの、賞与や退職金といった賃金の「本丸」は格差是正の道筋が示されていない。

 ただ退職金については裁判官の1人が、支払うべきケースだとする反対意見を述べている。判決は明暗を分けたが、是正を求める声は今後も強まるとみられ、その流れを止めることはできない。

■    ■

 働く人の約4割は非正規労働者である。高年齢者雇用安定法は、企業に希望者全員を65歳まで雇うよう義務付けている。

 この春、大企業に適用された「同一労働同一賃金」は、来年度から中小企業にも広がる。

 急速な少子高齢化で労働力不足は深刻化している。

 雇用形態によって働く人の意欲が失われないよう、賃金・報酬体系などの整備を急がなければならない。立場の弱い労働者が不利にならないよう、労使で格差を縮める議論を重ねるべきだ。