社説

社説[コロナ議事録なし]歴史の検証耐えられぬ

2020年11月5日 05:00

 新型コロナウイルス感染症を巡る政策を協議・決定するため、今年3月から計59回開いている県の対策本部会議(本部長・玉城デニー知事)の議事録が作成されない状況が続いている。

 議事録の未作成を本紙が6月に報道した後、玉城知事は公文書作成のルール化を明言。県は7月、知事や副知事が参加する会議で「議事概要」を作ると義務付けた上で、「議事録」は、所管部長が知事や副知事と調整して作るかどうかを決めるという指針を定めた。

 議事概要は発言者を明示せず、主な発言をまとめた形式にとどまり、発言者を記した逐語的な議事録とは異なる。

 県の説明は「指針に沿って議事概要を作り、ホームページで公開している。誰の発言かを明示するより、議論の中身や方針が分かればいい」というもので、今後も議事録を作る考えはないという。

 新型コロナの感染防止対策は、未知のウイルスにどう立ち向かうかというかつてない経験である。その過程を後世に残すことは、今を生きる私たちの使命と言っていい。中でも、日々の暮らしに大きな影響を及ぼす行政の判断がどう下されたのかは、その最たるものであるはずだ。

 何を根拠に、どのような考え方に基づいて重要な判断に至ったのか。政策決定過程をたどるには、議事録の存在が欠かせない。主な発言内容をまとめた「議事概要」では、歴史の検証に耐えられない。行政の透明性を確保する上でも、県の姿勢は不十分と言わざるを得ない。

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 県からすれば、自ら策定した「指針」に沿って対応しているとの反論もあろう。一方で指針は、知事や副知事との調整次第で議事録を作る余地を残す。

 読売新聞の調査によると、6月時点で、47都道府県に設置された対策本部会議のうち、35都道府県が発言者を明記し、全ての発言や議論の過程が分かる議事録を作っていると回答。未作成は沖縄を含む9県にとどまった。全国的にみても、議事録を作る方が行政の手法としてスタンダードであることが分かる。

 沖縄は、県独自の緊急事態宣言を2度出し、感染者数の人口比率も依然、高止まりしている。県経済の屋台骨である観光は大打撃を負った。専門家による疫学的分析も踏まえ、県がどう判断したのか、県民は知りたいはずだ。議事概要で事足りるとしている認識の再考を促したい。

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 新型コロナに関し、「行政文書の管理に関するガイドライン」の「歴史的緊急事態」に該当すると3月に閣議了解した政府にも、批判の矛先は向く。「政策の決定や了解を行う会議」の議事録作成を義務付けたものの、専門家会議は対象外。要点をまとめた議事概要の公表にとどまった。「国が恣意(しい)的に開示内容を決めてはならない」という有識者の指摘は的を射ている。

 住民に対する説明責任は民主主義の根幹をなす。行政の都合によってその範囲が狭まってはならず、事後検証が可能な説明の在り方を定着させなければならない。

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