社説

社説[バイデン氏勝利宣言]人種差別に明確なノー

2020年11月9日 06:49

 トランプ大統領の4年間に対する審判が下った。選挙結果が示しているのは、トランプ氏の継続を有権者は望まなかったという一点に尽きる。

 米大統領選は、民主党のバイデン前副大統領が共和党のトランプ大統領の猛追をかわし、勝利を確実にした。

 敗者は自身の敗北を認め、勝者は敗者の健闘をねぎらいつつ、勝利を宣言する。それが、大統領選を締めくくる従来のセレモニーだ。

 ところがトランプ氏はそうではなかった。あろうことか、開票途中に一方的に「勝利」を宣言した。

 「彼らは選挙を盗もうとしている」と、根拠も示さずに相手陣営を攻撃し、支持者をあおった。

 米国の主要メディアが一斉にバイデン氏の当確を報じた後も、「不正な選挙が行われている」として敗北を認めず、法廷で徹底抗戦する構えを崩していない。

 個人的スキャンダルや司法妨害、人種差別発言、口をついて出るうそに言い逃れ、国際機関からの相次ぐ離脱、コロナ対策に見られる科学的知見の軽視…。

 トランプ流の行き当たりばったりの政治、国民をあおる扇動政治によって、米国のソフト・パワーが傷つけられ、国際社会における信頼が急速に低下したのは間違いない。

 バイデン氏への一票は、多様性と国際協調を重視した政策への期待の一票であり、大統領個人に対する不信感に根ざした「反トランプ」の一票だった。民主党支持層に限らず変化に期待する声は多い。

■    ■

 大統領選が当初の予想を覆し、まれにみる大接戦になったのはなぜだろうか。

 「人種問題より治安維持」「コロナより経済」を重視した有権者の多くは、トランプ氏に票を投じた。支持者は「景気を回復させ雇用を取り戻した」とトランプ氏の経済政策を高く評価する。

 グローバリゼーションの恩恵を受けることなく、さびれた街で生活を切り詰めて暮らす人々の中には、熱烈なトランプ支持者が多いといわれる。

 中央政治に吸い上げられることの少なかったこうした層の声を拾い上げ、受け皿になったのが、4年前のトランプ氏だった。

 トランプ氏の今回の得票が4年前を上回り、大接戦になったということは、これらの層の不満や悲鳴が切実な声として再びわき起こった、とみるべきだろう。

 バイデン氏はこうした人々に正面から向き合わなければならない。

■    ■

 バイデン氏は、勝利宣言で「全ての米国人のための大統領になる」と述べ、国民の団結と融和を呼びかけた。

 分断と対立を克服することが米国政治の最大の課題である。

 トランプ氏の徹底抗戦は、対立感情を深めるだけで、何ものも生み出さない。法廷で結果がひっくり返るようなことになれば、米国はそれこそ収拾不能な混沌(こんとん)状態に陥る。

 分断と対立をこれ以上深めないためにも、トランプ氏には一日も早い名誉の撤退を期待したい。

連載・コラム
きょうのお天気
アクセスランキング
ニュース 解説・コラム
24時間 1週間