社説

社説[米新政権と基地問題]「沖縄の声」直に届けよ

2020年11月10日 05:00

 米大統領選で民主党のバイデン前副大統領の勝利が確実になったことで、沖縄の基地問題にどのような変化が生じるのだろうか。

 バイデン氏は既に新政権の布陣の検討に入っているとされる。主要ポストの候補者には、オバマ政権時に米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を推進した元高官らの名が挙がっているという。

 日米両政府が繰り返し確認してきた辺野古新基地推進の方針を新政権が転換するとは考えにくい。

 今のところ、政策転換に踏み切る動機が両政府にないからだ。

 大統領選では「米国第一主義」を掲げる共和党のトランプ大統領と、「国際協調」を訴えるバイデン氏との主張の違いが際立った。だが、対中政策については新政権も中国の強硬姿勢に強い懸念を示しており、関係改善が一気に進む状況ではない。

 在沖米軍基地の動向は、米中関係に左右されるところが大きい。

 沖縄の過重な基地負担が劇的に解消される見通しはなく、むしろ中国の海洋進出を背景に米中対立がエスカレートすれば基地機能が強化される恐れさえある。

 しかし、「中国の弾道ミサイルの発達で在沖米軍基地の脆(ぜい)弱(じゃく)性は高まっている」と知日派のジョセフ・ナイ元国防次官補が6年前に米軍の拠点の分散を主張したことからも分かるように「沖縄でなければならない」との考え方は危うい。

 沖縄の基地機能の強化ではなく、分散化による軽減を図るべきだ。

■    ■

 新基地計画は軟弱地盤の改良工事のため、当初計画を大幅に上回る9300億円の経費と12年の工期が必要となっている。この間、普天間飛行場の危険性が放置されることになる。計画が破綻しているのは明らかだ。

 一日も早い危険性除去に向け、日米両政府は具体的な方策を示さなければならない。

 米軍基地と隣り合わせに住民が生活し、米軍人らの犯罪、騒音や悪臭の被害、墜落や部品落下の不安などを抱える沖縄にとって基地問題は「人権問題」でもある。

 国政野党議員らが今年発足させた「日本プログレッシブ議員連盟」は、米民主党の議員連盟とのパイプづくりを模索している。リベラル派の議員間の連携を通し沖縄への理解が深まることを期待したい。

■    ■

 玉城デニー知事は、バイデン氏に祝意を表すとともに「沖縄の声に耳を傾けてほしい」とのコメントを発表した。

 バイデン氏は人種間の融和や多様性の大切さを説いている。「誰一人取り残さない社会」の実現を掲げる玉城知事の理念とも重なる。

 県にはワシントン事務所を通し新政権の外交・安保政策の情報収集を急いでほしい。米国の県系人ネットワークの力も借り、沖縄の声を米政府に届けるルートの構築も重要だ。

 再来年が復帰50年の節目であることを新政権に伝え、さらなる負担軽減に努めるよう求めてもらいたい。

もっと詳しく。有料会員ならこんな記事も読めます。

沖縄の米軍基地の集団感染 発端は米本土部隊から

報告書から異例の「辺野古」削除 海兵隊の沖縄への強いこだわり

「翁長が恋しいです」流れ呼んだ妻の訴え 沖縄県知事選

月額550円で有料記事が月100本読み放題の「ライトプラン」もございます。 

 
連載・コラム
きょうのお天気
アクセスランキング
ニュース 解説・コラム
24時間 1週間