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【深掘り】コロナワクチンに過大に期待すべきでない理由

2020年11月11日 11:12

 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。国内では2021年前半のワクチン確保に向け、予防接種法改正案の議論が始まった。海外では開発中のワクチンで90%以上の発症予防効果を確認したとする暫定的な臨床試験の結果も公表され、熱視線を浴びている。ただ現時点ではあくまで中間的な結果で詳細は明らかになっていない。専門家からは「より多くの人での検証を」と過度な期待を戒める声も聞かれる。

 5月、米メリーランド大で実施された、米ファイザーの新型コロナウイルスワクチンの臨床試験(同大医学部提供・AP=共同)

▽喜び隠せず

 「素晴らしい結果だ。予想していた人はわずかしかいなかっただろう」。米製薬大手ファイザーの暫定的な臨床試験結果が公表された9日、ファウチ米国立アレルギー感染症研究所長は米メディアの取材に驚きを隠さなかった。

 今回の試験は、約4万4千人にワクチンか偽薬を投与し、94人の発症が確認された段階で、これらの人がワクチンと偽薬のどちらを接種していたのかを調べた。その結果、90%以上の発症予防効果が確認できた。

 詳細は不明だが、AP通信などによると「90%以上」とは、発症者94人のほとんどが偽薬を投与された人で、ワクチン投与では8人以下だったことを意味する。ファウチ所長は以前「60%の結果が得られればうれしい」と語っていたという。

▽管理に課題

 ただファイザーは発症者が164人になるまで臨床試験を継続するとしており、最終的な結果は変わる可能性もある。ワクチンの効果が持続する期間や、人種や年代別の効き目、重症化を防ぐ効果など未知数な点も多い。同社は必要なデータがそろう今月中にも米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請する方針だ。

 世界保健機関(WHO)によると、3日時点で臨床試験の最終段階にあるワクチンはファイザーのものを含め10種類あるが、実用化までには課題も多い。ファイザーのワクチンは人工遺伝子の働きを利用するなどした新しいタイプで、マイナス70度以下での保管が必要。輸送や管理体制構築が課題となる。

 臨床研究が一時中断するケースもある。ブラジル政府は9日、中国の製薬会社シノバック・バイオテックが開発中のワクチンに「深刻な事態」があったとして治験を中断したと発表。これまでも英製薬大手アストラゼネカや米大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンも治験が一時中断され開発が遅れた。

▽冷静な目で

 そもそも風邪や肺炎につながる呼吸器の感染症は、感染を防ぐワクチンの開発は極めて難しいとされ、実用化されているインフルエンザワクチンも重症化予防が主眼。どこまで効果があるかは承認されて多くの人が使うようになるまで分からない可能性がある。臨床試験では接種後にだるさや頭痛、筋肉痛などの体調不良が高い頻度で起きることも分かっており注意が必要だ。新潟大の斎藤玲子教授は「多くの人に投与を始めると予測されなかった副反応が出ることがよくある。冷静な目で受け止めることが重要だ」とくぎを刺す。

 呼吸器感染症に詳しいけいゆう病院の菅谷憲夫医師は「高齢者や持病のある人など、重症化しやすい人への効果の見極めが必要。ワクチンだけに頼るのではなく、手洗いやマスクなど普段の衛生習慣も引き続き徹底すべきだ」と指摘した。

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