社説

社説[思いやり予算交渉]地位協定見直す契機に

2020年11月12日 06:11

 日米両政府は、2021年度以降の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関する正式交渉を開始した。米大統領選挙で、バイデン氏が勝利を確実にしたタイミングでの交渉本格化だ。日本政府には予算の多寡にとどまらず、沖縄の基地負担軽減を議論する場と位置づけてもらいたい。

 日米地位協定24条は、駐留経費は米国が負担すると定めている。

 しかし、円高による米側負担増を背景に、1978年から本来米側が支出うべき費用の肩代わりが始まった。

 スタート時は、基地従業員の福利費62億円だったが、特別協定を結んだ87年度以降は、日本側が従業員の給与や光熱費、訓練移転費を支出。2020年度の防衛省予算で「思いやり予算」は1993億円にふくれあがっている。さらに、米軍再編経費などを含めると、在日米軍関係費は約6千億円にのぼる。

 同盟国の駐留経費について最後に公表された04年の米国防総省の報告書によると、日本は74・5%を負担。韓国40%、ドイツ32・6%などと比べても割合は突出している。

 トランプ大統領は、日本に現在の4倍以上にあたる年80億ドル(約8400億円)を求め、昨年7月来日したボルトン補佐官を通じ内々に提示していた。同盟国への「安保ただ乗り論」は、一方的で理不尽な要求である。米軍にとって嘉手納や三沢、横須賀基地などは、必要とあればアジアや中東にも常に出撃できる前方基地として、米国の戦略と国益に寄与してきた。

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 日本政府は米政府との交渉で、安全保障関連法制定や宇宙分野での協力を挙げ、同盟への貢献を強調したという。

 だが、同盟の強化が進む一方、地位協定の抜本的な改定は進んでいない。

 日米安保体制で重い負担を強いられているのが、沖縄である。米軍基地から有害物質が大量に流れ出ても、米側の同意がなければ、自治体の基地内への立ち入りができない。住宅地や学校上空の飛行、深夜早朝の爆音を伴う訓練も米軍の裁量に委ねられたままだ。民間地域で米軍機が墜落しても、事故機を日本側の警察や消防が捜査できないなどの不平等は一刻も早く、地位協定を改定して、是正されなければならない。

 日本政府は思いやり予算の交渉の中で、地位協定の抜本的な改正につながる協議を求めていくべきだ。そうでなければ基地を抱える自治体住民や国民の理解は得られない。

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 5年ごとに見直される思いやり予算の交渉だが、日本の21年度予算案編成を前に、今回は1年分の暫定合意となりそうだ。同盟国との関係を重視するバイデン政権下で、その間に、本格的に突っ込んだ議論をすべきである。

 全国知事会は、地位協定の抜本的見直しを求める基地負担軽減への提言をまとめた。

 基地周辺に住む住民の不安と向き合い、辺野古新基地建設の見直しをはじめ、県民が実感できる負担軽減をどう図っていくのか。復帰50年に向けて解決すべき問題として県は、日米両政府への働き掛けを強めてほしい。

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